老舗自動車メーカーのデータ活用術【中編】
英自動車メーカーのDXを支える人材育成制度「アプレンティスシップ」とは
Bentley Motors初の最高データ責任者を務めるアンディ・ムーア氏は、同社のデータ戦略において「データサイエンティストの育成と確保」を重視した。その施策の一つ「アプレンティスシップ制度」とは何か。
アンディ・ムーア氏は、2022年11月に英大手自動車メーカーBentley Motors初の最高データ責任者(CDO)に就任した人物だ。CDO登用以前にはデータ&デジタルトランスフォーメーション(DX)部門のリーダーを務め、社内のデータ活用を推進するセントラルデータオフィス(Central Data Office)の立ち上げに関わった。
CDOを引き受ける前、ムーア氏はセントラルデータオフィスがDX推進においてどのような役割を果たすかを資料としてまとめ、取締役会に示した。その資料には、Bentley Motorsが2020年に発表した長期事業戦略「Beyond 100」で、データ戦略を通じてセントラルデータオフィスがどのように貢献するかも書いてあったという。Beyond 100は、「カーボンニュートラル」(CO2排出量と吸収量の相殺)の実現に向けて2030年までに同社の商品ラインアップを電気自動車(EV)に統一することを目指すものだ。
ムーア氏が掲げたデータ戦略の「4つの柱」
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連載:老舗自動車メーカーのデータ活用術
技術者不足に切り込む自動車メーカー
ムーア氏が掲げたデータ戦略の柱は、以下の4つだ。
- データガバナンスの管理
- データを効果的に利用するための「データクラウド」(データの一元管理とデータ分析の仕組みを備えたクラウドサービス)導入
- データリテラシー(情報や知識を活用する能力)を習得しデータ活用のスペシャリストを育成する施策「Data Dojo」の実施
- データ部門の従業員がさまざまな事業分野の従業員と協働するスキルの強化
データリテラシー教育に取り組むことを見越してムーア氏が実施していたのが、DXを共に推進する優秀な人材を採用するための仕組み「アプレンティスシップ制度」の構築だったという。同制度は、若者が実習生として企業で実務経験を積みながら学び、給与を得る人材育成制度だ。
アプレンティスシップ制度にひも付く実習カリキュラムは、開始から5年がたち、現在の内容は「データサイエンスに一点集中している」とムーア氏は話す。実習生は研修期間の20%を大学で、80%をBentley Motorsで過ごす。同氏はさまざまな部門と連携して、アプレンティスシップ制度が同社に価値をもたらすよう取り組んできた。
アプレンティスシップ制度を使って新人育成に取り組むだけでなく、中途採用を通じて社内にデータサイエンティストを増やし、人材の層を厚くすることにも力を入れているとムーア氏は説明する。同氏がチームメンバーと取り組んでいる目下の課題は、社内のさまざまな場所から生み出されるデータにアクセスできるようにすること、洞察を得られるようにすることだ。
後編は、Bentley Motorsが選んだデータクラウドと、導入時にこだわったポイントについて解説する。
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