米バージニア港が無線LANではなく「プライベート5G」を選んだ理由:港湾業務を変える5G
バージニア港のノーフォーク国際ターミナル(NIT)は、港湾設備の運用効率改善を目指してプライベート5Gのネットワークを構築する。NITの拡張計画において5Gが果たす役割は。
米国バージニア州ノーフォークにあるバージニア港のノーフォーク国際ターミナル(Norfolk International Terminal:NIT)は、貨物取扱量を増やすための改善計画を進めている。半自動化設備を増強し、敷地内のどこでも信頼性の高い通信をするために、NITはVerizon Businessと契約し、「5G」(第5世代移動通信システム)を自営網として利用する「プライベート5G」のネットワークを構築する。Verizon Businessは、通信事業者Verizon Communications(Verizonの名称で事業展開)の法人向けサービス部門だ。
NITは大西洋岸の港湾機能の中でも特に重要な役割を果たす施設だ。NITは北ターミナル、南ターミナル、中央鉄道車両基地の3つに分かれている。NITは年間220万TEU(20フィートコンテナ換算単位)の貨物取扱量を誇り、鉄道や州間高速道路網に直接接続している。
NITの“港湾改善計画”にプライベート5Gが果たす役割は
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NITが進めている改善計画を大別すると、北ターミナル拡張プロジェクトと中央車両基地拡張プロジェクトの2つがあり、貨物の年間総取扱量を360万TEUまで引き上げることを目標としている。北ターミナルの拡張だけでも6億5000万ドルの投資規模だ。船に積み下ろしをする新型クレーンの設置や、半自動化スタッキングクレーンの導入によるコンテナスタックヤードの再構築など、設備の近代化と拡張によって年間140万TEUの取扱量を新たに創出しようとしている。
バージニア港の別のターミナルであるバージニア国際ターミナル(Virginia International Terminal:VIT)は、2022年にプライベート5Gのネットワークを構築した。NITとVerizon Businessの取り組みはそれに続くものだ。
NITのプロジェクトは、無線LANの代わりに、Verizonの5G通信サービス「5G Ultra Wideband」を使用し、270エーカー(約1090平方キロ)をカバーする。無線LANの通信は屋外では不安定になりがちだからだ。音声通話やテキストメッセージ、データ通信の安全性を確保するためには、モバイルアプリケーション「Verizon Push to Talk Plus」(PTT)を使用するという。商業施設や工場のような場所で、Verizonのプライベート5Gネットワークと端末(電話、スマートフォン、タブレットなど)を使った共同作業をするには「PTTは最適なモバイルアプリケーション」だとVerizon Businessは主張する。
NITにとってVerizonのサービスを使ったプライベート5Gがもたらすメリットは、安全管理を目的としたドローン、自律走行トラック、移動式クレーンが利用できるようになるメリットだけではない。Verizon Businessは以下のメリットが見込めると説明する。
- ダウンタイム(システム停止時間)の削減
- 業務効率の向上
- スループット(データ伝送速度)やレイテンシ(遅延)といった性能の向上
- ネットワークの信頼性の向上
NITのプロジェクトを担当する、VITのテクノロジー&プロジェクト担当シニアバイスプレジデントのリッチ・セシ氏によれば、海運ターミナルは“変化の激しい屋外環境”であり、運用において安全性と使い勝手を確保するためには、信頼性が高くて「どこでもつながる接続環境」が必要だった。「Verizonのプライベート5Gは、その要求に応える仕組みを提供した。われわれの要求が進化するにつれて、さらに多くの機能を提供し、規模を拡大できる余地がある」と同氏は評価する。
海運ターミナルの運用最適化を考える中で、Verizonがプライベート5Gを提案したのは、センサー技術、人工知能(AI)技術、在庫管理の先進技術を採用する際の接続基盤としてそれが最適だと考えたためだという。
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