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「クラウドは“ふわふわ”だから環境に優しいはず」はとんでもない勘違いかも?クラウドサービスによる本当の影響【前編】

世界中でクラウドサービスへの依存度が高まるにつれて、環境への悪影響は見過ごせない規模になる可能性がある。クラウドコンピューティングが本質的に抱えている環境リスクとは。

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 クラウドコンピューティングの「クラウド」には雲のような“ふわふわ”した響きがあるが、クラウドの中身はその印象とは異なるものだ。ハードウェアやそれに含まれるレアメタル、ケーブル、ファン、サーバ、ストレージアレイ、ルーター、スイッチ、PCやスマートフォンなど、数々の要素がクラウドの仕組みとして動いている。

 クラウドサービス事業者がコンピューティング用のリソースを提供すればするほど、クラウドサービスが環境に与える影響はより顕著になっている。クラウドコンピューティングは大量のエネルギーを必要とし、そのエネルギーの生産が環境フットプリント(人が地球環境に与える負荷の大きさを表す指標)となる。それが生み出す具体的な影響を、幾つかの視点で考えてみよう。

「クラウドが環境に優しい」はとんでもない勘違い?

 米エネルギー省(DOE)が2016年6月に公開した資料「United States Data Center Energy Usage Report」によれば、2014年時点で米国のデータセンターは推定700億キロワット時(kWh)を消費し、これは米国の総電力消費の約1.8%を占めていた。それを踏まえ、世界経済フォーラム(World Economic Forum)は「クラウドコンピューティングとデータセンターは、IT企業の炭素排出量の大半を占める要因」と主張する。

 プロフェッショナルサービス企業Ernst & Young(EY)で、クラウドコンピューティング向けテクノロジーコンサルティングのマネージングディレクターを務めるイアン・グローベル氏はこう説明する。クラウドコンピューティング施設やデータセンターは、ハードウェアの電力供給だけでなく、建物の運用、特にマシンを冷やすための空調にも電力を必要とする。しかもクラウドコンピューティングは、冷却のために大量の水を必要とする。

 例えばGoogleが2022年11月に公式ブログで公開したデータによると、2021年にはGoogleの平均的なデータセンターで1日当たり45万ガロン(約170万リットル)の水を消費した。

 研究者は、OpenAIのAI(人工知能)チャットbot「ChatGPT」のようなサービスの普及が水の使用量を増加させる、と警告する。例えばカリフォルニア大学リバーサイド校(University of California, Riverside)が2023年3月に公開した資料によると、クエリを20〜50回実行するだけで約0.5リットルの真水が必要になる。

 グローベル氏が指摘するもう一つの問題は熱だ。クラウドコンピューティングは大量の熱を発生させる。温室運営など熱を必要とする分野に排熱を転用し、エネルギーを再利用しようと考える事業者は増えつつあるが、今のところはまだ実現例は希少だ。

 クラウドコンピューティング施設は広大な土地を必要とする。このことも環境に大きな影響を及ぼす。「クラウドサービス事業者は、“ある面においては環境への影響を最小限に抑えられても、他の側面で環境を悪化させ得る場所”に施設を建設しがちだ」とグローベル氏は言う。同氏によると、クラウドサービス事業者は「砂漠地帯にデータセンターを建設することで、太陽電池アレイを追加して電力を供給する」「寒冷地域にデータセンターを建設することで、冷却の必要性を減らす」ということを考える。しかしこれはトレードオフの問題を生じさせる。砂漠地帯の場合は水資源に負担を掛けることになり、寒冷地域の場合は未開発の緑地を開拓することになる。

 大規模データセンターから発生する騒音も環境問題として浮上している。データセンターがある、あるいは建設を予定している地域の人が、データセンターの冷却ファンが発する騒音に抗議する事例は珍しくない。

 「電子ごみ」もクラウドコンピューティングの普及が引き起こす環境問題だ。調査会社Statistaが2024年1月に公開した予測データによると、2022年に世界で排出された電子ごみは5940万トンで、以降も毎年増え続け、2030年には7470万トンに達する見込みだ。


 次回は、クラウドコンピューティングが台頭した経緯を踏まえて、クラウドコンピューティングが環境に与える影響の現状を探る。

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