銀河の挙動さえ丸分かり 「SDM」は"宇宙の謎"解明にどう使われているのか?:データサイエンスのモデル入門【第4回】
宇宙の粒子シミュレーションなど、予測困難な事象の分析に用いられる予測モデル「システムダイナミックスモデリング」について解説する。
経済や社会、物理学など多岐にわたる分野の複雑な問題を解決するために、人間はさまざまな種類の予測モデルを活用してきた。一方で、相互作用の結果が複雑過ぎるあまり、コンピュータでは予測が難しい事象も存在する。このような事象の解明に用いられるのが「システムダイナミックスモデリング」(SDM)だ。その仕組みや活用方法を解説する。
システムダイナミックスモデリング(SDM)
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連載:データサイエンスのモデル入門
- 第1回:ギャンブルが起源「データサイエンス」の基礎が分かる“4つの予測モデル”とは?
- 第2回:相互作用を予測する「エージェントベースモデリング」とは
- 第3回:画像処理から気象予報まで――「離散事象シミュレーション」とは何かおさらい
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イデアル(環論)数学の世界では、独立した関数で世界を記述できると考える。つまり、世界の事象を線形的に扱えるという考え方だ。一方で、非線形システムでは、ある変数の値を変えると、その相互作用で別の変数も変化する。
コンピュータを用いれば、差分方程式を用いて非線形システムを数値的に解くことが可能だ。差分方程式では、離散数学を用いて特定の解を見つけ、その解の集合を構築する。
このようなシステムの簡単な例として、「捕食者と被食者のシミュレーション」がある。草食動物がいると仮定して、餌となる草木がなくなるまで個体数は増加する。草木がなくなった場合は、草木が回復するまで草食動物の個体数は減少する。もしここに、捕食者である肉食動物が加わったらどうだろう。草木や草食動物、肉食動物の数の推移は非線形になり、予測困難かつ混沌とした状況が生じる。この方程式は「リアプノフ方程式」と呼ばれ、さまざまな経済モデルや流体力学、気体力学の方程式を記述する際に用いられる。
このように予測が事実上不可能な事象である「カオスシステム」の研究手法として、「システムダイナミックモデリング」(SDM)がある。SDMは、離散事象シミュレーションと数値メソッドに基づき、システム内の各構成要素の振る舞いを決定する。
宇宙の謎を解明するための粒子シミュレーションでもSDMが使用されている。複数の星に相互作用する力に基づいて銀河全体の挙動をモデル化し、シミュレーションできる。カオスシステムはフラクタル次元と呼ばれる分数の次元を生み出し、これは反復的で再帰的な構造や新たな振る舞いと関連している。
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