AMD「NVIDIAに勝つ」は大げさではない? 攻めに出るGPU“永遠の二番手”:あの大手も続々採用
NVIDIAの競合となる半導体ベンダーAMDが、GPU製品を拡充するなど攻めに出ている。AI技術を活用するための半導体製品として、AMD製品を採用する動きも活発だ。AMD製品に対する評価とは。
半導体製品ベンダーAdvanced Micro Devices(AMD)は人工知能(AI)技術分野で競合NVIDIAに対抗するため、攻勢に転じている。NVIDIAがAI分野で際立った存在感を示す中、GPU(グラフィックス処理装置)を含む半導体製品や、AI技術活用のためのソフトウェアを含めて、AMD製品に対する評価はどのようなものなのか。大手ITベンダーによる採用が進みつつある現状を踏まえて整理する。
AMDが「GPUでNVIDIAに勝つ」は案外大げさではない?
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「AI」を軸にしたNVIDIAの戦略とは
「AI技術はコンピューティング分野を大きく変えようとしている」。AMDのCEO(最高経営責任者)リサ・スー氏はそう語る。AMDは大規模なデータセンターで使われるサーバだけではなく、PCまでを含め、ITのさまざまな分野でAI技術を利用しやすくする半導体製品の開発に力を入れる。
AMDが手掛けるAI分野向け半導体製品には、同社が2023年12月に発表したGPU「Instinct MI300」シリーズや、AI技術の活用を想定したソフトウェア開発支援ライブラリ・ツール群「AMD ROCm」などがある。「これらを使うことで、大規模言語モデル(LLM)を用いた本格的なAI技術活用ができる」と同社は説明する。こうしたデータセンター向けの製品群だけではなく、同社はPCにおけるAI技術活用を最適化するプロセッサ「Ryzen AI」も提供している。
相次ぐAMD製品の採用
Microsoftは2023年12月、同社クラウドサービス群「Microsoft Azure」の新たな仮想マシン(VM)「ND MI300x v5」を発表した。このVMはInstinct MI300を採用し、AI技術の処理に最適化している。OracleはInstinct MI300を同社のベアメタルサーバに採用する。Dell TechnologiesやHPE、Lenovoも、Instinct MI300を採用する計画を発表した。
Meta Platforms(旧Facebook)は、Instinct MI300とAMD ROCmを使い、メタバース(巨大仮想空間)などの各種サービスを運用する同社データセンターで、AI技術活用を広げる計画を明らかにしている。
HPEのシニアバイスプレジデントでAI担当の最高製品責任者(CPO)トリシュ・ダムクローガー氏は、AMDのAI分野向け半導体製品を、スーパーコンピュータ「HPE Cray EX」に搭載し、演算性能を高めるとともに、エネルギー効率を改善したと説明する。これにより、HPE Cray EXのユーザー企業はAI技術を使ったモデリングやシミュレーションがしやすくなる。
ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)の最高技術責任者(CTO)ブロニス・スピンスキ氏によれば、同研究所はHPEが構築を手掛ける同研究所のスーパーコンピュータ「El Capitan」にAMDのAI向け半導体製品を取り入れ、演算性能の向上を図っている。「CPUとGPU間のデータのやりとりが性能を低下させる原因になっていたが、AMDのAIアクセラレーターを使うことで問題を解決できた」(スピンスキ氏)
AIベンダーOpenAIは、同社が開発するGPU用プログラミング言語「Triton 3.0」でInstinct MI300を使えるようにしている。AIベンダーLaminiのCTO、グレッグ・ディアモス氏はAMD ROCmについて「AI開発者にとって事実上の標準となっているNVIDIAの『CUDA』(開発者向けツール群)に引けを取らない」と評価する。
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