「脱メインフレーム」に踏み切れない企業の“3つの本音”とは?:メインフレームは生き残るのか?【中編】
クラウドサービスの発展によりメインフレーム脱却の機運が高まるが、企業はまだしばらくの間メインフレームを使い続ける見込みだ。脱メインフレームが難しい3つの理由を解説する。
「メインフレームの終わり」が語られて久しい。だがメインフレームに多額の投資をしてきた企業が代替システムに移行した例はあまり目立たない。企業がメインフレーム脱却に消極的にならざるを得ない理由を3つ解説する。
「脱メインフレーム」なぜ進まない? 企業の“3つの本音”とは
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連載:メインフレームは生き残るのか?
これからのメインフレームの姿とは
1.障害発生時のリスク
企業がメインフレームのクラウド移行をためらう理由の一つが、障害発生時の懸念だ。クラウド移行後、企業のシステムに対する制御レベルは低下し、障害への対処は基本的にクラウドベンダーに任せることとなる。
とりわけプロプライエタリ(商用)データベースが障害で稼働停止した場合、ユーザー企業だけでなくクラウドベンダーにも数百万ドル規模の損害が発生する可能性がある。米ITコンサルティング企業J. Gold Associatesでプレジデント兼プリンシパルアナリストを務めるジャック・ゴールド氏は、「クラウドがダウンした場合、廃業の危機に陥る企業も存在する」と語る。
2.システムの複雑化
2000年代初頭まで、メインフレームを分散システムに移行することは比較的容易だという認識が広がっていた。当時のデータベースは特定タスク向けに作られていたため、近年と比べてサイズが小さかったからだ。しかし、企業においてデータベースをクラウドや分散システムに移行するプロセスは、年々複雑化している。
プロプライエタリデータベースのソースコードを別のシステムで動作するよう書き換えるには、かなりの時間がかかる。ITコンサルティング企業Communications Network Architectsでプレジデントを務めるフランシス・ジュベック氏は、「メインフレームで稼働するアプリケーションの大半はミッションクリティカルなもので、非情に複雑な構造となっている」と話す。
3.ドキュメントの不足
ドキュメントが存在しない何百個ものアプリケーションを、数十年以上にわたって運用している企業が存在する。このような企業がメインフレーム脱却に取り組む場合、計画は数カ月以上遅延する場合もあり、移行担当者はCEOからのプレッシャーにさらされることになる。
「近年のIT運用においてドキュメント化は不可欠であり、ドキュメントの不足をささいな問題として見過ごしてはいけない」。こう指摘するのは、経済誌Fortuneが発表する企業の売上高ランキング「Fortune 100」掲載銀行に勤めるシステムアーキテクトだ。
このシステムアーキテクトは、ドキュメントが存在しないメインフレームデータベースを分散型システムに移行するプロジェクトに携わった経験がある。プロジェクト完了までには1年以上の歳月がかかり、経営陣は「なぜプロジェクトを引き受けたのか」と怒りをあらわにしたという。
後編は、AI(人工知能)技術の活用が進む中で、再びメインフレームが脚光を浴びる理由を解説する。
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