Web会議の「複数人だと話しにくい」問題を解消する“VR会議”とは?:VRの普及は遠くない?【中編】
Web会議はテレワークや遠隔のコミュニケーションを支える手段としてなくてはならない存在だが、参加者が増えるとうまく機能しないことがある。これに悩んだHPEのチームは、VRを活用することにした。
Web会議や、対面での会議とWeb会議を同時に実施するハイブリッド会議は、テレワークを実施する組織にとっては便利な手段だ。だが、どういったミーティングにもWeb会議やハイブリッド会議が役立つわけではない。参加者が増えるほど、参加者同士がコミュニケーションを取りにくくなる問題があるからだ。
Hewlett Packard Enterprise(HPE)でリードソリューションアーキテクトを務めるロブ・ホンブルグ氏は、Web会議でのコミュニケーションに苦戦していた。そのような時に、ホンブルグ氏はVR(仮想現実)の技術と、VRを使ったあるサービスに興味を持った。
HPEのチームが採用した“VR会議”とは?
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VR技術の今後を考察
ホンブルグ氏が所属するチームは、世界各地にいる8人のメンバーで構成されている。メンバー同士が顔を合わせる際は、Glue CollaborationのVRサービス「Glue」を使用しているという。チームミーティングだけでなく、戦略会議やポートフォリオ会議にも同サービスを使用する。
「従来のWeb会議ツールでこれらの会議を効率的に進めることは非常に大変だった」とホンブルグ氏は振り返る。Glueを導入したことで、お互いの存在を共有している感覚が高まり、成果の質も向上したという。こうしたメリットから、HPEでは顧客向けサービスにもVR技術を活用するようになったという。
既存のツールとVRツールを統合
VRのメリットを実感したHPEは2023年11月、同社の顧客向けワークショップで利用していたオンラインホワイトボードツールのベンダーMiroとVRコラボレーションツールを提供するNaerとの間でパートナーシップを結んだ。これによってNaerのMiro向け統合機能をMiroのマーケットプレースから購入できるようになった。
Naerの仮想空間内に設置したホワイトボードを、既存のMiroホワイトボードツールと連携させられるため、「仮想空間と現実の作業環境のギャップを軽減するのに役立つ」とMiroは説明している。
ユーザーは、ヘッドセットとハンドコントローラーを装着してNaerの仮想空間にある洞穴や原っぱに集まる。そこでMiroのホワイトボードを呼び出し、ボタンを押しながらマイクに向けてアイデアを話すと、付箋が自動的に書き起こされるといった仕組みだ。片手を挙げれば、付箋をホワイトボードに貼ることもできるという。
Miroのシニアプラットフォームアーキテクトであるショーン・ウィンターズ氏は、「Naerはさまざまな景色を見せてくれる、夢のような島」と表現する。例えば、時間設定を切り替えることで空の明るさを調整できる。ブレーンストーミングセッション用にタイマーを設定して、全員が見えるように空に映し出すことも可能だ。
Naerによると、同社のツールは「企業のオフィスを再現するもの」ではなく「働く人をオフィスから森や島、洞窟へと連れ出す世界を構築するもの」だという。そのためNaer製品のグラフィックスは、意図的に会社を連想させないものになっている。「オフィスや会議室をただ模しただけの仮想空間は、ブレーンストーミングには向かない」とウィンターズ氏は説明する。
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