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クラウドで代替できない「メインフレーム」に待ち受ける末路クラウドとメインフレームのこれから

企業のクラウドサービス活用が進んだにもかかわらず、いまだにメインフレームは稼働し続けている。クラウドサービスがメインフレームの代わりにならない理由と、今後メインフレームに代わる可能性がある技術は何か。

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 クラウドサービスやメインフレームを含めて、2024年以降に企業のインフラで何が重要になるのかを確認しよう。筆者はAmazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoftといったクラウドベンダーに取材を続けてきた。ユーザー企業がクラウドサービスに期待することは、ROI(投資利益率)の向上とTCO(総所有コスト)の削減だ。

 登場当初のクラウドサービスのことを、筆者は「メインフレームを現実的にも仮想的にも再発明する試みだ」と主張していた。しかしいまだにクラウドサービスは完全にメインフレームに置き換わってはいない。メインフレームは今でも使われているばかりか、基幹システムのインフラとしてさまざまな企業を支えている。企業が所有するサーバルームに設置された大型のメインフレームは、その地位をクラウドサービスに奪われてはいない。

 クラウドサービスの利用が進む中でも、なぜメインフレームは生き残っているのか。これがまず本稿で考える点だ。とはいえ、メインフレームがこの先ずっと生き残るとは言い切れない。企業のITインフラは、これからどうなるのか。

「メインフレーム」に待ち受ける末路

 クラウドサービス導入を進めている企業でメインフレームが残る理由として、クラウドサービスがコストや拡張性などの点で、企業の要件を満たしていないことが挙げられる。またデータ主権やデータガバナンスの面で、クラウドサービスの利用が難しいシステムもある。データや事業の性質によっては、何もかもをクラウドサービスに移行するのは単なる失敗でしかないというのも現実だ。

 「技術的負債」という考え方がある。技術的負債は、企業の利用に足りるほど発展していない技術や、単に目的に合わない技術などに大規模な投資をしてしまうことを指す。これは人生で経験する「どうしてこんなものを買ってしまったのか」という苦しみに似ている。

 システムを更改するときにハードウェアとソフトウェアを全て入れ替えることを指す「フォークリフトアップグレード」という言葉がある。例えばポートやスイッチのデータ転送容量が限界を超え、それ以上拡張する手段が用意されていなければ、既存のイーサネットスイッチへの投資は行き詰まる。そうなるとフォークリフトアップグレードで一新するしかない。

 技術的負債が表面化しつつあるのは、近年システムのインフラや開発手法が土台から変わりつつあるためだ。その一例としてDevOps(開発と運用の融合)が挙げられる。DevOpsを実現するために、企業はクラウドネイティブアプリケーションへの方向転換を迫られている。

 自社のインフラの基礎となる技術やベンダーが買収され、その後、買収先の企業がその技術を事実上無視することがある。半導体ベンダーのBroadcomが仮想化ベンダーVMwareを買収して以降、VMwareの事業や製品の再編が進んでいる。これを機にVMware製品からの脱却を検討するユーザー企業もある。しかしそもそもVMware製品は買収が決定する前から、メンテナンスや更新に掛かるコストの課題を抱えていた。問題はこうした状況に対してどのように動くかだ。ますます高額になるハイブリッドクラウド製品やVMware製品を使ったインフラに、さらに多くの資金を投じるのは万能の解決策にもなりそうにない。場合によっては技術的負債を増やすことにしかならない。

筆者がハイブリッドクラウドを支持する理由

 筆者は2022年に、英SoftIronのベルリン研究所で同社の製品「HyperCloud」を試した。同製品はユーザー企業のオンプレミスでプライベートクラウドのインフラを構築し、他のクラウドサービスと同様の手法で管理できるようにするためのソフトウェアだ。

 筆者はクラウドコンピューティングがメインフレームを再発明するものという自身の考え方が、今でも理にかなっていると考えている。しかしクラウドサービスがその答えであったことはない。SoftIronのHyperCloudを評価したときにまず考えたのは、HyperCloudは企業のデータやシステムをオンプレミスインフラに戻し、クラウドサービスへの依存度を減らす優れた手段になりそうだということだ。

 今は、HyperCloudのようなハイブリッドクラウド製品をメインフレームに代わる製品として位置付けられるのではないかと考えている。ハイブリッドクラウドは、クラウドサービスのメリットである拡張性や管理効率の良さ、システム管理の属人性の低下、ハードウェアコストの削減といったメリットと、オンプレミスのメリットであるインフラやデータの所有権やコストの予測可能性の高さを両立させる手段となり得る。

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