「サーバレス」で見落としがちな“5つのデメリット”とは?:サーバレスコンピューティングの基礎解説【第2回】
サーバレスアーキテクチャの導入を検討する組織は、その欠点を理解しておく必要がある。主なデメリットと、導入前に考えるべきポイントを紹介する。
クラウドコンピューティングの進化を背景に、サーバレスコンピューティングへの関心が高まっている。サーバレスコンピューティングには、インフラ管理のコスト削減やスケーラビリティ(拡張性)の向上といったメリットがある。一方で、幾つかのデメリットも存在する。本稿は、サーバレスコンピューティングの5つのデメリットと、導入前に考慮すべき点について解説する。
サーバレスコンピューティングの“弱点”とは?
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クラウド運用の落とし穴
1.技術面での制約
サーバレスコンピューティングの構成要素である関数(以下、サーバレス関数)は、一定期間使用されないと休止状態になる。その状態からサーバレス関数を使う(コールドスタート)際に、レイテンシ(実行時間全体の遅延)が発生する。厳しいレスポンスタイムが要求されるシステムでは、この制約が問題となり得る。
加えて、サーバレスアーキテクチャには以下のような制約が存在する。
- 実行時間の制限
- サーバレス関数には最大実行時間が設定されているため、長時間実行するプロセスには向いていない。
- 実行環境の制限
- 利用できるプログラミング言語やバージョンが限られているため、使用できる技術に制約がある。
2.ベンダーロックインの懸念
サーバレスアーキテクチャはしばしば、特定のクラウドベンダーのサービスやツールに依存する。これはベンダーロックインの問題、つまり、将来的に他のクラウドベンダーが提供するサービスへの移行が難しくなったり、費用がかさんだりといった問題を引き起こす可能性がある。
また、クラウドベンダーはそれぞれ独自のサーバレス関連サービスを提供しており、他のクラウドベンダーは同等のサービスを提供していないことがある。その場合、他のクラウドベンダーへの移行が一層困難になる。
3.インフラの制御面の課題
サーバレスコンピューティングのサーバ管理は、クラウドベンダーが担う。そのため、開発者側でのOSやハードウェアなどのインフラ制御が難しい。これは、アプリケーションが特定の環境設定が必要な場合に問題となる。
4.セキュリティの課題
サーバレスコンピューティングのサーバレス関数は、サイバー攻撃の入口となる可能性がある。各クラウドベンダーセキュリティ対策を講じているものの、ユーザー企業側も対策が必要だ。なぜなら、サーバレスコンピューティングのサービスは「インフラのセキュリティについてはクラウドベンダーが責任を担い、データやアプリケーションのセキュリティはユーザーが責任を担う」という共有責任モデルに基づいているからだ。
5.モニタリングとデバッグ(エラー修正)の課題
サーバレスアプリケーションは、その分散性により、モニタリングとログ管理が困難になりやすい。さらに、サーバレス関数はステートレス(過去の処理状態を引き継がない)で一時的な性質を持つため、問題が発生した際にその条件を再現することが難しい。
「サーバレス」導入前に考えるべきこと
上述した制約を踏まえて、サーバレスコンピューティングの導入を検討する際は、その潜在的な影響を検討する必要がある。具体的には、以下のポイントを重点的に考えるべきだ。
- 現状の整理
- 現在の業務内容と、サーバレスコンピューティング導入によって達成したい目的を明確にする。
- 運用とコスト管理
- サーバレスコンピューティングの導入が、クラウド運用チームやコスト管理戦略にどのような影響を与えるのか、既存のプロセスにどのように統合されるのかを評価する。
- アプリケーションアーキテクチャ
- サーバレスコンピューティングは、マイクロサービスや、特定のイベントをトリガーにしてプログラムを自動実行する「イベント駆動型プログラミング」への移行促進に役立つ。企業は自社のアプリケーションアーキテクチャを評価し、サーバレス化が可能かどうか、企業にとって有益かどうかを判断する。
- API(アプリケーションプログラミングインタフェース)やデータベース、その他のクラウドサービスとの互換性を含め、サーバレスアーキテクチャが既存のシステムにどう統合されるか理解する。
- スキルセット
- サーバレスコンピューティングの活用には、クラウドサービスやAPI統合、イベント駆動型プログラミングに関する知識が求められる。サーバレスアーキテクチャとクラウドサービスに焦点を当てたワークショップやオンライン講座、実践を通じて、スタッフをトレーニングする。
次回は、サーバレスコンピューティングの具体例を紹介する。
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