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COBOLを使う「コボラー」が消えていく“深刻過ぎる代償”COBOL人材不足の危機【前編】

プログラミング言語COBOLの技術者が続々と引退していく中で、COBOLに精通した人材を見つけることが困難になっている。この状況が引き起こしている、深刻な問題とは。

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金融 | 基幹システム | プログラミング


 プログラミング言語「COBOL」は半世紀近くにわたり、金融系や行政系をはじめとしてさまざまな重要システムを支えてきた。そのCOBOLに携わってきた世代の開発者は続々と引退し、COBOLに精通した人材を見つけることは困難になりつつある。そうした中でもCOBOLで構築したシステムが稼働を続け、ある深刻な問題を引き起こしている。

「コボラー」が消えていく“深刻過ぎる代償”

 「COBOLを用いたシステム構築は1960年代に始まった」。こう話すのは、オランダ国立数学情報科学研究機関(CWI:Centrum Wiskunde & Informatica)の研究員と、アイントホーフェン工科大学の教授兼自動ソフトウェア分析の議長を務めるユルゲン・ヴィンジュ氏だ。

 20世紀半ばに、コンピュータを用いた自動化がオランダで始まった。銀行や保険会社などの金融機関は、大量のデータを処理できるシステムを導入した。これらシステムの開発には、当時の主流言語だったCOBOLが使われた。

 「COBOLで開発したシステムは、過去数十年間で巨大化してしまった」とヴィンジュ氏は指摘する。市場のニーズや法規制など外部環境の変化にシステムを適応させるためには、定期的に新機能を追加したり、機能を改良したりすることになる。そうしてシステムを拡張する結果、ソースコードは指数関数的に増大する。

 システムを拡張する中で、「システムを管理しやすい状態に保つ」というプロセスはしばしば後回しにされてしまう。時間の経過とともにシステムは複雑化し、保守がしにくくなる。

“退職したコボラー”を呼び戻す

 「引退したCOBOL技術者たちは、COBOLの知識だけでなく、長年携わってきたシステムの知見も豊富に持っている」。こう話すのは、ヴィンジュ氏のCWIの同僚であるティス・ファン・デル・ストーム氏だ。ストーム氏は、グローニンゲン大学のソフトウェア工学教授を務める。

 COBOL技術者がいなくなることは、COBOLを扱える人が不足するというだけでなく、そのシステムをメンテナンスしたり改修したりするのに関連する知見を有する人材も不足する事態につながる可能性がある。この状況は、システムがCOBOLで稼働している組織にとって重大なリスクとなる。

 オランダ社会保険銀行(SVB)のシステムは、COBOLで動いている。SVBのシステムで問題が発生した際、同行はそのシステムに関する知見を持っている人材がほとんど引退している状況に直面した。

 SVBはこの問題に対処するため、引退したCOBOL技術者たちを呼び戻さなければならなくなった。対象のシステムやCOBOLについて十分に理解していた技術者らが来てくれたことで、問題を迅速に解決することができたという。


 後編は、COBOLで構築したシステムの維持に関わる技術を解説する。

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