AIに必要なのは「SSD」か「HDD」か――その疑問に答える:AIモデルの成否はストレージ次第?【前編】
AIモデルの学習から推論に至る各ステージでは、SSDやHDDのどのようなストレージが必要になるのか。Western Digitalによる定義を基に考えてみよう。
AI(人工知能)モデルの開発や活用には、データ保管用のストレージが欠かせない。各種のSSDやHDDのうち、学習から推論に至るAIモデルの一連のライフサイクルに適するのはどういったストレージなのか。ストレージベンダーWestern Digitalが定義した、AIモデルの6つのステージと、それぞれに適したストレージを基にまとめた。
AIに必要なのはHDD、それともSSD?
Western Digitalは、生データの保管から新しいコンテンツ生成に至るまでの、AIモデルの6つのステージに適したストレージを定義する「AIデータサイクル」を公表した。AIモデルの6つのステージは以下の通り。
- 生データのアーカイブ、コンテンツストレージ
- データの準備と取り込み
- AIモデルのトレーニング
- インタフェースとプロンプティング
- AI推論エンジン
- 新しいコンテンツの生成
このAIデータサイクルは、AI技術の活用に必要なストレージタイプを理解するのに役立つように設計されている。Western Digitalが、各ステージにマッピングしているストレージ種別は以下の通り。
- 生データのアーカイブ、コンテンツストレージ
- 大容量のエンタープライズ(企業向け)HDD
- データの準備と取り込み
- 大容量のエンタープライズSSD
- AIモデルのトレーニング
- 高パフォーマンスのエンタープライズSSD
- 大容量のエンタープライズSSD
- インタフェースとプロンプティング
- 高パフォーマンスのエンタープライズSSD
- 大容量のエンタープライズSSD
- 大容量のクライアントSSD
- AI用デバイス搭載の組み込みフラッシュメモリ
- AI推論エンジン
- 高パフォーマンスのエンタープライズSSD
- 大容量のエンタープライズSSD
- 大容量のクライアントSSD
- AI用デバイス搭載の組み込みフラッシュメモリ
- 新しいコンテンツの生成
- 大容量のエンタープライズHDD
- 大容量のクライアントSSD
- AI用デバイス搭載の組み込みフラッシュメモリ
まず、第1段階と第6段階には大容量でコスト効率が良いHDDを推奨していることが特徴的だ。データの準備と取り込みの段階には、データ読み書きが高速なSSDを推奨している。3段階目から5段階目には、高速なSSDと大容量のSSDを推奨している。
AI技術の活用拡大で高まるストレージ需要
企業がAI技術のためにより多くのデータを使用する傾向が強まるのと同時に、AIインフラを最適化する必要が見えてきた。さまざまなベンダーがAI技術を中心にしたインフラの構築に注力している。Western DigitalによるAIデータサイクルと、各ステージに適したストレージの定義も、AIモデル開発の速度や精度、コスト効率を高めることに寄与する取り組みの一つだと捉えることができる。
2022年から2023年にかけてHDDもSSDも需要が低迷し、価格が大幅に下落する傾向が目立ったものの、2024年第1四半期からストレージの需要は回復し始めている。調査会社IDCのアナリストであるジェフ・ジャヌコウィッツ氏によると、AI技術によるデータ生成の需要が高まるのとともに、ストレージ需要が高まってくる。
ジャヌコウィッツ氏は、企業はこれからますます多くのデータを保存する必要があると指摘する。AIモデルを改善するにはデータが必要であり、利用できるデータは日々増加する傾向にあるからだ。
次回はAIデータサイクルを前提にしつつ、Western Digitalがどのようなストレージ製品を提供するのかを紹介する。
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