クラウドデータセンターの環境負荷軽減に役立つ「ESGツール」とは?:クラウドサービスと環境配慮【後編】
データセンターの環境負荷軽減が社会的な課題となる中で、ユーザー企業も環境負荷の問題とは無縁ではいられなくなりつつある。主要クラウドベンダーは環境負荷に関してどのような選択肢を提供しているのか。
製品やサービスを選ぶ際、その製品やサービスを提供するベンダーがESG(環境、社会、ガバナンス)に配慮した取り組みを実施しているかどうかが判断基準になる場合がある。クラウドサービスを選定するときも同様だ。ユーザー企業はクラウドベンダーがESGに配慮しているかどうかに加えて、そのクラウドサービスを利用することで環境にどのような影響があるのかを判断基準とすることがある。Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleといった主要クラウドベンダーが提供しているESGに関するツールや施策を紹介する。
Amazon Web Services(AWS)
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連載:クラウドサービスと環境配慮
変化に迫られるデータセンターの実態
AWSの「Customer Carbon Footprint Tool」(CCFT)は、AWSのクラウドサービスを利用することで発生する二酸化炭素排出量を可視化するツールだ。GHG(温室効果ガス)排出量の国際的な算定基準「GHGプロトコル」に従い、利用するサービスや地理的位置に基づいて二酸化炭素排出量を予測したり計測したりすることができる。
AWSは環境に関する国際的な団体Global Optimismと共同で「The Climate Pledge」(気候変動対策に関する誓約)に調印している。同社はこれに基づき、2025年までに100%再生可能エネルギーで事業を運用し、2040年には「ネットゼロ」(温室効果ガスの排出量と、除去量および吸収量が等しい状態)を目指す方針を打ち出している。CCFTはその方針の一環として同社が提供するツールだ。CCFTのデータは、CSV形式でダウンロードできる。
Microsoft
ユーザー企業が排出する二酸化炭素量の収集やデータの一元管理、分析、予測、レポートの作成を支援するためのクラウドサービスが、Microsoftの「Microsoft Cloud for Sustainability」だ。同サービスは以下のツールを備えており、ESGに関する洞察を取得したり、国際的な基準と規制に沿ったレポートを作成したりできる。
- Sustainability Manager
- 二酸化炭素排出量のデータ収集と排出量計算を自動化する。
- 排出影響ダッシュボード
- Microsoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」や「Microsoft 365」の使用を通じて排出される二酸化炭素量を分析する。
Googleは自社が保有するデータセンターへの送電網を、2030年までに24時間365日、カーボンフリーエネルギー(CFE)で運営するという目標を設定している。CFEとはCO2を排出しないエネルギーを指す。同社はCFEのスコアを提供しており、ユーザー企業はそれによって二酸化炭素排出量の削減を検討できる。
GoogleはESG関連のデータやサービスを提供するツール「ESG Book Platform」と連携し、ユーザー企業がデータの管理や分析ができるようにしている。ESG Book Platformは、企業が持続可能で倫理的なビジネス慣行を推進するための国際的なイニシアチブ「国連グローバルコンパクト」の10原則に準拠している。
マルチクラウド
複数のクラウドサービスを利用するマルチクラウドを採用する企業にとっては、サードパーティーベンダーのサービスが選択肢になる。具体的には、以下のようなサービスがある。
- Benchmark Digital Partnersの「Benchmark Gensuite」
- 環境やリスク管理、コンプライアンスといったESGに関する企業の目標達成を支援する。ESGに関連する項目のデータをダッシュボードで一元管理でき、データ分析やレポート作成、目標の達成度合いの把握ができる。
- Diligentの同名サービス
- ESGに関する各項目のデータをダッシュボードで一元管理できる他、レポート作成や目標達成の進捗(しんちょく)管理ができる。
- Ecometricaの同名サービス
- EcometricaはESGソフトウェアベンダーのEcoOnline傘下の企業。同名サービスでは温室効果ガス排出量の測定や森林破壊リスクの把握ができる。
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