クラウドベンダーもユーザーも「ESGと無縁ではいられない」のはなぜか:クラウドサービスと環境配慮【前編】
クラウドベンダーは、クラウドサービスの提供においてESGに関する取り組みを重視するようになっている。実はクラウドサービスを利用するユーザーもESGに無縁ではない。
IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)などのクラウドサービスを提供するクラウドベンダーは、ESG(環境、社会、ガバナンス)に関する取り組みを重視している。ESGはクラウドベンダーだけではなく、クラウドサービスのユーザー企業にも関係する問題となりつつある。まずはESGとクラウドサービスの基本を押さえておくとよい。
クラウドベンダーもユーザーもESGと無縁ではいられない?
ESGは、企業の経営や投資判断において重視されるようになった3つの要素をまとめた用語だ。3つの要素には、環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)が含まれる。ESGは投資家が投資先を選ぶ時だけではなく、ユーザーが利用するサービスを選ぶときの基準になることもある。
データセンターの運営においては、二酸化炭素排出量の増大といった環境面での課題が表面化している。企業のインフラとしてクラウドサービスを利用する動きが広がる中で、クラウドサービスが環境負荷の観点で担う責任はますます重くなっており、ESGとはもはや無縁ではいられなくなっている。
ESGのそれぞれの項目では、以下のような取り組みが評価基準となる。
- 環境
- 温室効果ガスの排出量削減や天然資源の保全、洪水や火災などの災害対策といった、環境面負荷軽減のための施策を実施しているかどうか。
- 社会
- 人的資本の管理や公正な賃金の支払い、従業員エンゲージメントの向上といった観点から、顧客や従業員、サプライヤー、地域社会とどのような関係を構築しているか。
- ガバナンス
- 法規制に準拠した取り組みを実施しているかどうか。
- 株主や従業員、顧客、地域社会に対して適切な場面でリーダーシップを発揮できているかどうか。
- 透明性を持った適切な情報開示ができているかどうか。
データセンターの増加による環境負荷の増大を受けて、クラウドベンダーは投資家から改善を要求されている。それに対して、クラウドベンダーはESGの観点でさまざまな取り組みを実施している。クラウドサービスを提供するデータセンターの消費電力を削減する工夫はその一つだ。ユーザー企業の一部は、クラウドベンダーのそうした取り組みに着目して、優先的にそうしたクラウドサービスを選択している。ユーザー企業も、IT利用に関する環境負荷への影響を問われる時代だからだ。
クラウドベンダーは、クラウドサービスを提供するデータセンターにおいて消費電力の抑制効果がより高いサーバを導入したり、データセンター内の冷却効率を最新の手法で高めたりしている。そのため一般的なユーザー企業のオンプレミスインフラよりも効率的に脱炭素に貢献できている場合がある。データセンターで消費するエネルギーに、温室効果ガスを排出しないエネルギーを使うクラウドベンダーもある。
後編は、大手クラウドベンダー3社が展開する環境負荷軽減を目的としたサービスや取り組みを紹介する。
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