SSDが安くなるのは「積層数じゃない方のあの進化」の恩恵だった?:ストレージとメモリの進化の鍵は?【前編】
ストレージとメモリのカンファレンス「FMS」で、ベンダー各社はデータ量の増大やAI技術の活用を見据えたさまざまな新技術や新製品を披露した。特に注目に値する新技術や、トレンドの変化を紹介する。
データ量の増大やAI(人工知能)技術の台頭などがある中で、ストレージとメモリの技術進化に変化が見られる。2024年8月に開催されたカンファレンス「Future of Memory and Storage Summit」(FMS)で、ベンダー各社はデータ利用の最新のトレンドを踏まえた新技術や新製品を披露した。その内容を振り返りながら、ストレージとメモリに関して特に注目すべき変化や、専門家がそれをどう評価しているのかを紹介する。
SSDが安くなるのは「あの進化」の恩恵だった?
これまでFMSは「Flash Memory Summit」と称して開催されていたが、2024年はFuture of Memory and Storage Summitに名称が変わり、HDDやアーカイブなどストレージ関連のさまざまな技術が対象範囲として加わった。「今回の名称変更は、フラッシュメモリやSSD以外のストレージとメモリの実装範囲が近年拡大していることを反映したものだ」。ストレージおよびメモリに関するコンサルティング企業ChannelScienceのチーフサイエンティストで、FMSの座長を務めたチャック・ソービー氏はそう語る。
今回のFMSでは、AI技術などのおなじみのテーマに加え、以下のトピックも話題に上った。
- 量子メモリ(量子ビットに基づくメモリ)
- ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けのスタック(積み重ね)型DRAM(Dynamic Random Access Memory)
- 「Compute Express Link」(CXL)などの規格を使用した、異なる形式のメモリを組み合わせたメモリ(ブレンデッドメモリ)
- CXLは、CPUとメモリおよびさまざまなタイプの周辺デバイスを接続するインターコネクト規格。
- ストレージ需要に伴うHDD需要の継続
- データ配置の自由度の向上
- クアッドレベルセル(QLC)採用のSSDで複数の領域(ゾーン)へのデータ配置を実現するストレージ
- QLCは1つのメモリセル(記憶素子)に4bitを格納する記録方式
ベンダーによる新製品の発表や展示で主だったものは以下の通り。
- キオクシアの広帯域SSD
- 電気インタフェースではなく光インタフェースを採用。
- データセンター内の電気配線を光配線にすることで、デバイス間の物理距離が長くなってもデータ転送の品質を保てるようになるとともに、システム設計の自由度を向上させる。
- Micron Technologyの、汎用(はんよう)インタフェース規格「PCI Express 6.0」(PCIe 6.0)採用のデータセンター向けSSD
- 連続したデータを順番に読み取るシーケンシャルリードで26GBpsを実現。AI技術関連のストレージとしての役割を狙う。
- Samsung Electronicsの「BM1743」
- 128TBの容量を実現する、QLC採用のSSD。
専門家の見解
2024年のFMSでベンダー各社が披露した新技術や新製品について、専門家はどう評価しているのか。
コンサルティング企業Coughlin Associatesのプレジデント、トーマス・コフリン氏
今回のFMSでは、HDDやNAND型フラッシュメモリが以前よりも大きく取り上げられており、カンファレンスの名称変更にふさわしい内容だった。
一方で、NAND型フラッシュメモリの積層数は増加しているものの、増加のペースは加速していないように感じた。ベンダーは積層数を増やすことによるコスト効率向上よりも、セルピッチ(メモリセル同士の間隔)やセル径(メモリセルの大きさ)の縮小、メモリセル1つ当たりのビット数増加などによる容量増加により重点を置くようになったのではないかと考えられる。
ソービー氏
イベント全体を通じて大きなテーマとなっていたのはAI技術だった。AI技術はシステム設計にどう役立つのか、AI技術はストレージにどう影響するのか、AI技術がメモリやストレージの需要をどう高めるのかといったテーマが取り上げられていた。
相変わらず重要なのは電力だ。テキストや画像を自動で生成するAI技術「生成AI」を使って、1つのメッセージから1つの画像を生み出すには、スマートフォンを1日1回、1年半かけて充電するぐらいの電力が必要になると説明したベンダーがあった。
次回も引き続き、2024年のFMSに対する専門家の意見を紹介する。
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