徹底解説:「VMware Horizon」と「Azure Virtual Desktop」の違いとは?:2大VDIを徹底比較【中編】
「VMware Horizon」は新会社のOmnissaが引き継ぎ販売していく。HorizonシリーズとMicrosoftの「Azure Virtual Desktop」を、サポートするOSやプロトコル、ライセンスなどの視点で比較する。
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仮想化ベンダーVMwareを買収した半導体ベンダーBroadcomは、2024年2月に、投資会社のKKRにVMwareのVDI(仮想デスクトップインフラ)製品を含むエンドユーザーコンピューティング(EUC)部門の売却を発表した。そして2024年5月、VMwareのEUC部門を引き継ぐ形でKKRから新会社Omnissaが独立した。
デスクトップ環境を仮想化する製品を提供するベンダーとして、OmnissaとMicrosoftは広くユーザー企業からの支持を得ている。両者の製品はどのような違いがあるのか。利用できるOSやプロトコル、ライセンスなどの違いを確認していこう。
OmnissaとMicrosoftのVDI、サポートOSからライセンスまで解説
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VDIを深く学ぶ
OmnissaのVDI製品である「VMware Horizon」(以下、Horizon)シリーズと、MicrosoftのクラウドサービスでVDIを提供する「DaaS」(Desktop as a Service)「Azure Virtual Desktop」(以下、AVD)を比較する。
サポートする仮想デスクトップOS
VDIでは一般的に、エンドユーザーが操作するクライアント端末のOSは比較的自由度が高いが、仮想デスクトップ環境を構築するサーバ側で準拠しているOSは限られている。
AVDを展開できるサーバ側のOSは以下の通りだ。
- 「Windows 10 Enterprise」
- 「Windows 10 Education」
- 「Windows 11 Enterprise」
- 「Windows 11 Education」
- 「Windows Server 2016」
- 「Windows Server 2019」
- 「Windows Server 2022」
- 「Windows Server 2025」
さらに、以下のOSは1台の仮想マシンを複数のユーザーが同時にログインして利用できる「マルチセッション」機能を以下のOSで提供している。
- Windows 10 Enterprise
- Windows 10 Education
- Windows 11 Enterprise
- Windows 11 Education
OmnissaのHorizonシリーズでは、以下のOSがサーバ側で利用できる。
- Windows 10
- Windows 11
- Windows Server 2016
- Windows Server 2019
- Windows Server 2022
さらにHorizonシリーズはOS「Linux」のディストリビューションを利用できる。
- Ubuntu
- Red Hat Enterprise
- SUSE Linux Enterprise Serve
ディスプレイプロトコル
AVDはリモート接続用のプロトコルに、Microsoftの「リモートデスクトッププロトコル」(RDP)を使用している。RDPは以下のような機能を追加してきた。
- 「RemoteFX」
- レンダリング(画像や映像の描画)結果を効率的に転送する
- 「RDP Shortpath」
- 動画や音声のなどリアルタイム性が求められるコンテンツ送信に使われる通信プロトコル「UDP」(User Datagram Protocol)を利用して、通信の遅延を削減する
一方、Horizonシリーズは「VMware Blast Extreme」(以下、Blast Extreme)プロトコルを採用している。Blast ExtremeはVMwareがモバイルデバイス向けに最適化して開発した画面転送プロトコルだ。システム管理者は必要に応じてRDPに切り替えることができる。
RDPとBlast Extremeは共に、3Dモデリングなどの「GPU」(グラフィックス処理装置)による処理を転送できる。
「デバイスリダイレクション」とその他の種類のリダイレクション
「デバイスリダイレクション」とは、エンドユーザーが手元のクライアントデバイスに接続しているUSBメモリなどのデバイスを、仮想デスクトップでも認識して利用できるようにする技術だ。
クリップボードやプリンタなど、AVDとHorizonシリーズがリダイレクト可能なデバイスやデータは多岐にわたり、共通している。
プロファイルとアプリケーションの管理
エンドユーザーは仮想デスクトップの利用中、セッション(接続の単位)が途切れても、再開した時にそれまで使っていたアプリケーションを継続して利用したいはずだ。このような一貫性を保つためには、システム管理者がアプリケーションとユーザープロファイル(エンドユーザーのデータや設定)を管理する必要がある。
AVDは、仮想デスクトップをエンドユーザーに割り当てるためのユーザープロファイルの管理手段として、「Profile Container」(プロファイルコンテナー)を用いる。Profile Containerは、Microsoftのユーザープロファイル管理機能群「FSLogix」の一つで、複数のユーザープロファイルを1箇所のファイルサーバに保管できることが特徴だ。
一方、Horizonシリーズは、「Dynamic Environment Manager」という製品を提供している。Dynamic Environment Managerを通じてシステム管理者は、設定をセッション間で保存しながら、OSやアプリケーションを操作する
アプリケーションの配信に関して、AVDでは「RemoteApp」、Horizonシリーズでは「Published Applications」という機能でアプリケーションを遠隔から配信する。
アプリケーションの配信時は、ゴールデンイメージ(テンプレートとなる仮想デスクトップイメージ)にインストールすることがある。ゴールデンイメージにインストールしたアプリケーションは、基本的に全てのユーザーが利用できる。
しかし、アプリケーションの状態が変化し続ける場合、そのたびにゴールデンイメージを更新すると運用の負荷が重くなる。そのため、AVDは「アプリタッチ」機能、Horizonシリーズは「App Volumes」機能によって、システム管理者特定のユーザーにだけアプリケーションパッケージ(アプリケーションとデータや設定ファイルをまとめたもの)を配信できるようにしている。
サブスクリプションと価格
OmnissaはHorizonシリーズの永久ライセンスを廃止して、サブスクリプションライセンスのみで提供するようになっている。MicrosoftもAVDの永久ライセンスを提供していない点では共通している。とはいえ、両製品のライセンス体系は複雑であり、どちらのコスト効率が優れているかを比較することは難しい。
MicrosoftはAVDに関して、以下の3種類のライセンスを提供している。
- 使用量に応じた従量課金
- 1年または3年でインスタンスを契約する
- 契約したインスタンスのキャパシティの範囲内では、ユーザー数や接続数が増えても追加料金は発生しない
- 1年または3年でインスタンスを契約する際に、一定料金を支払うことを約束することで、一定の使用量まで割引を受ける
次回はHorizonシリーズとAVDを比較する時にどこに注目すればいいかを解説する。
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