生成AI用セキュリティポリシーの作り方【前編】
「生成AI」活用で見落としがちな盲点とは? 今すぐ始めるセキュリティ対策
従業員による生成AIの無秩序な利用が、企業の情報漏えいや知的財産権侵害を引き起こす恐れがある。生成AIに関するセキュリティポリシーを確立し、適切な管理体制を構築することは急務だ。どこから手を付けるべきか。
テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)が急速な進化を遂げる今、この技術がもたらす「善」だけではなく「悪」を防ぐことにも関心が集まっている。これはサイバーセキュリティにとって重要な関心事であり、企業は生成AIが原因となるセキュリティ侵害の対策に追われるようになった。
対策として、生成AIを含むサイバーセキュリティポリシーを確立することが有効だ。では、生成AIがもたらすセキュリティ問題にはどのようなものがあるのか。それらに対処するために、生成AIのセキュリティポリシーに盛り込むべき要素とは。
放置しているとまずい生成AIのセキュリティリスク
サイバー攻撃者は生成AIを駆使し、ディープフェイク(本物の人物を偽装する偽情報)をはじめ巧妙なソーシャルエンジニアリング攻撃(人の心理的な隙を狙う攻撃)やフィッシング攻撃を仕掛けてくる。そうした生成AI関連のリスクに対して適切な対処ができていない企業は、データ漏えいや不正アクセス、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)などのマルウェア攻撃といった危険にさらされかねない。大規模言語モデル(LLM)から意図しない回答を引き出す「プロンプトインジェクション攻撃」や、攻撃者がLLMの教師データを改ざん・破損させる「データポイズニング攻撃」も懸念材料だ。
従業員による機密データの暴露や許可されていないAIツールの使用(シャドーAI)、生成AIの脆弱(ぜいじゃく)性、コンプライアンス義務違反など、生成AIに関連する課題にも注意しなければならない。
AI関連規格とフレームワーク
企業が安全な生成AIを開発・導入する上で、セキュリティ規格やフレームワークは重要な役割を果たす。国際標準化機構(International Organization for Standardization)が定める以下の規格は、AI技術のリスクを特定、評価するために有用だ。
- ISO/IEC 22989:2022
- AI分野の概念と用語を定義する規格。
- ISO/IEC 23053:2022
- 機械学習(ML)を用いたAIシステムを開発するためのフレームワーク(設計、手順)を確立する規格。
- ISO/IEC 23984:2023
- AI技術のリスク管理に関する指針を示す規格。
- ISO/IEC 42001:2023
- AI技術の管理システムを確立し、リスクを組織的に管理するための要件を規定する規格。
米国立標準技術研究所(NIST)は、安全で信頼できるAI技術を開発・導入する企業に向けて、AI技術のリスク管理フレームワーク「Artificial Intelligence Risk Management Framework」(AI RMF)を発表した。その他にもさまざまな組織が、企業のAIシステム構築・展開を支援することを目的とした、リスクとサイバーセキュリティ脅威に対処するためのフレームワークを公開している。
AIシステムを開発する際、特にサイバーセキュリティに関する懸念がある場合は、上記の文書を参照するとよい。これらの文書や推奨行動は、企業が生成AIセキュリティポリシーに組み込むべき管理策や、AI技術に起因するサイバーセキュリティ脅威に対処するための手順として活用できる。
次回は、生成AI用セキュリティポリシーを策定する際に検討すべき項目を、領域ごとに分けて解説する。
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
4
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
5
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
6
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
7
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
8
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー