OracleとIBMに託したクラウド戦略 英国政府が結んだ“大型契約”の狙いとは?:省庁横断プロジェクトが加速
英国政府は、OracleとIBMをパートナーに、複数の政府機関で共通のITサービスを提供する「シナジープログラム」を開始。10年間で7億1000万ポンドを投じ、政府業務の効率化とコスト削減を目指す。
英国政府は2024年9月、複数省庁に共通のITサービスを提供する「シナジープログラム」のITサービス提供ベンダーとしてOracleとIBMを選定した。このプロジェクトの契約額は7億1000万ポンドで、契約期間は2034年8月29日までの10年間だ。英国政府とOracle、IBMはこの大型契約で何を実現しようとしているのか。
英国政府が巨大プロジェクトで目指すものとは
シナジープログラムは、複数の政府省庁や外郭機関が共通のITサービスを利用することで、行政の効率化とコスト削減を目指すプロジェクトだ。OracleとIBMに加えて、コンサルティング会社のDeloitteが協力する。シナジープログラムの影響を受ける公務員は約25万人で、参加する主な省庁は次の通りだ。
- 英労働年金省(DWP)
- 司法省(MoJ)
- 環境食糧農村省(DEFRA)
- 内務省(Home Office)
英国政府の見解によれば、シナジープログラムの目標を実現するためにはSaaS(Software as a Service)型のERP(統合業務)システムを導入して、ITインフラと業務プロセスの変革を進める必要がある。財務および人事関連のデータを管理して、適切な意思決定につなげることが重要だ。
こうした目的のために、Oracleの発表によれば同社はクラウドサービス群「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)に加えて、SaaS型アプリケーションスイート「Oracle Fusion Cloud Applications Suite」を提供する。Oracle Fusion Cloud Applications Suiteの主な構成要素は次の通りだ。
- クラウド型ERPシステム「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning」
- 人材管理(HCM)システム「Oracle Fusion Cloud Human Capital Management」
- サプライチェーンマネジメント(SCM)システム「Oracle Fusion Cloud Supply Chain and Manufacturing」
- データ分析システム「Oracle Fusion Data Intelligence」
シナジープログラムの最高技術責任者兼ERPプログラムディレクターを務めるクリス・マータフ氏は「英国の公務員の半数近くを雇用する4省横断で共通のシステム運用のモデルを構築し、業務プロセスを確立する」と述べる。
Oracleでシニアバイスプレジデント兼英国カントリー・リーダーのシボーン・ウィルソン氏は、「今回の10年におよぶ契約は英国民に恩恵をもたらす」と述べた上で「政府省庁に対してコスト効率性の徹底を求めるプレッシャーは高まり続けている」と話す。
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