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熱心だったウォルマートが「多様性」を取りやめる理由米国で「DEI」を見直す動き

米国のDEI施策が、政権交代に伴い見直されようとしている。この動きに呼応するのが、DEI施策に取り組んできた大手スーパーマーケットチェーンWalmartだ。この動向は何を示しているのか。有識者の声を紹介する。

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経営 | マーケティング


 2024年11月の米国大統領選で当選したドナルド・トランプ氏が率いる新政権は、連邦議会とともに政府の「DEI」(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン:多様性、公平性、包摂性)施策を廃止する計画を進めている。この動きに連動しているのがスーパーマーケットチェーンを運営するWalmartだ。これまで同社はDEIを軸にさまざまな施策を実施してきた。何があったのか。有識者の声を紹介する。

WalmartがDEIを“やめる”理由

 トランプ氏率いる共和党が提出する「Dismantle DEI Act of 2024」は、政府機関のDEIに関する活動や研修、請負業者への連邦資金の提供を取りやめる内容だ。上院の次期副大統領候補のJ.D.バンス氏がこの法案を提案した。下院ではテキサス州選出のマイケル・クラウド議員が主導している。バイデン政権下の議会でこの法案が成立する可能性は低いものの、トランプ氏が大統領に就任すれば2025年1月から共和党が両院を掌握する。

 法案が成立した場合、DEIの施策に関わる政府職員は解雇される可能性がある。政府に商品やサービスを提供する企業も影響を受ける恐れがある。

 この動きは企業のDEI施策に影響を及ぼしている。Walmartは、性的少数者(LGBTQ+)の権利擁護に取り組むNPO(非営利団体)Human Rights Campaign(以下、HRC)との契約を終了すると発表した。HRCは、労働環境におけるLGBTQ+の包摂性を評価する企業平等指数(Corporate Equality Index)を公表している。契約が終了すれば、Walmartは評価対象ではなくなる。

 2020年に黒人男性のジョージ・フロイド氏が警察官に殺害された事件を受け、Walmartは「人種的公平性センター(Walmart.org Center for Racial Equity)」を設立していたが、その支援を打ち切るという報道もある。Walmartが公開しているDEIの報告書によれば、同社の従業員は多様性に富んでおり、人権に関するさまざまなキャンペーンで高評価を得ている。

 中小企業向けにリーダーシップ研修を実施するEmpower Globalの創設者兼CEOを務めるサマンサ・カーリン氏は、Walmartの動きを「考えが足りない」と批判する。

 カーリン氏によると、DEIは広い概念だ。包摂性のポイントは、他者の経験を理解し、自分の経験が全ての人に当てはまるわけではないことに気付けることだ。採用時の偏見を減らすための研修を実施したり、従業員に公正に賃金を支払ったりすることは公平性にひも付く取り組みだ。「DEIは文字通り、Empower Globalを含む小規模な企業を支援するためにある」(カーリン氏)

 「Walmartの動きは政権の動きに沿うものだ。同社がDEIの考え方に共感していたわけではなく、宣伝目的だったことが分かる」とカーリン氏は非難する。

 DEIは特定のグループに属する従業員やサプライヤーを優遇するものではない。全ての従業員に機会を創出したり、従業員間で共感を育んだりするための考えだとカリーン氏は強調する。同氏によれば、DEIを促進する取り組みが組織のパフォーマンス向上に寄与するという調査結果もある。

 DEIやリーダーシップ開発を専門とするコンサルティング会社Belong Groupのプレジデント、ジム・ゴットシャル氏は、Walmartの決定は、従来のDEIに対する従業員の不満を反映していると説明する。

 ゴットシャル氏によると、従来のDEI施策は組織のリーダーからの賛同を十分に得ることなく実施される傾向にある。その結果、疎外感を覚えたリーダーから協力を得ることができなくなり、施策が失敗に終わる場合があるという。

 ゴットシャル氏は最後に、「DEI施策を縮小すれば、DEIを重視する従業員や消費者がWalmartから離れる恐れがある」と指摘した。

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