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「逃げ場がない監獄」 Appleの社内規定が“痛烈な批判”を浴びた背景BYODが浮き彫りにした問題

社内規定が個人のプライバシーを侵害しているとして、Appleの従業員が同社を提訴した。訴状はAppleのBYODに関する社内規定を批判し、「逃げ場のない監獄」と表現した。なぜ、激しい言葉で非難されたのか。

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 私物端末の利用に関するAppleの社内規定が個人のプライバシーを侵害し、カリフォルニア州法に違反しているとして、Appleの従業員が2024年12月2日(現地時間)に同社を提訴した。訴状では、Appleの社内規定を「逃げ場のない監獄」と表現している。なぜ、このような激しい言葉で非難されたのか。

激しく非難された背景

 原告のアマー・バクタ氏(デジタル広告技術および運用マネジャー)は、Appleに対して複数の主張をしている。特に目立つのは、私物端末の業務利用(BYOD)の管理規定に関するものだ。

 訴状によると、Appleの従業員が「勤務中および勤務外においても」業務のために連絡が取れるように要求されている。従業員の大部分は、仕事のために私物のiPhoneを使用しているという。訴状ではBYODという用語は使用していないが、私物端末の業務利用に関するAppleの社内規定について詳しく言及している。

 訴状によると、Appleは従業員に「モバイル端末に組み込んで使うSIMカード『eSIM』(組み込み型SIM)や仮想プライベートネットワーク(VPN)を私物端末で使用する」ことを要求している。そのため、従業員の私物のiPhoneが事実上、「Appleが管理する」デバイスになっているという。訴状では、Appleは個人のメールや写真、動画、位置情報データなどデバイス上の全データにアクセスする権利を有していると指摘されている。

 Appleはデバイスごとにオンラインストレージ「iCloud」のアカウントを1つまでしか許可していない。そのため、従業員は私用のアカウントと業務用のアカウントを混同せざるを得ず、実質的に「Appleに管理されている」という。Appleは従業員のデバイスに「業務用フォルダ」を追加しており、iCloudに保存されたデータを制御できる恐れがあると、原告は主張している。

 訴状は「勤務中も勤務外も、従業員はAppleの監視の目にさらされている」とAppleを批判している。Appleは米TechTarget Editorialの取材に応じていない。

仕事と私生活の境界が曖昧に

 私物端末の業務利用は、仕事と私生活の境界を曖昧にする可能性があると、英国のリーダーシップ心理学センター(Centre for Leadership Psychology)の主任リーダーシップ心理学者エーデル・ホリデー・クイン氏は述べている。

 「私物端末の業務利用は、心理学者が『スピルオーバー』と呼ぶ状況を引き起こす可能性がある」とクイン氏は指摘する。スピルオーバーとは、一方の領域(仕事や私生活)がもう一方の領域に拡大し、その状況に影響を及ぼすことだ。同氏は「時間が経過するにつれて、燃え尽き症候群や生産性の低下につながる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 AppleのiCloudアカウントに対するデバイス数の制限は、こうした問題を悪化させていると、モバイル通信アプリケーションを提供するMovius Interactive Corporationの製品リーダー、チェタン・ビスウェスワー氏は指摘する。

 ビスウェスワー氏は「業務で使用するアプリケーションがiCloudに依存しないようにする必要がある。業務上の通信内容が個人のiCloudに流出する恐れがあるからだ」と述べる。

 モバイルセキュリティプラットフォームベンダーiVerifyの共同創業者ロッキー・コール氏は、「包括的で透明性のあるBYODの規定を設けることが重要だ」と述べる。個人のプライバシーを尊重しながら、雇用主がアクセスできる境界を明確に定義する必要があると提言する。

 コール氏は「従業員が規定の策定に協力的に関与すべきだ」と付け加える。「雇用主は、社内のセキュリティニーズと個人のプライバシー権のバランスを取ることにコミットメントを示す必要がある」と同氏は主張している。

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