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「IT部門=コストセンター」から脱却できるゼロベース予算の実践方法とは?ゼロから考えるクラウド予算【中編】

IT部門をコスト要因とみなす風潮がある中で、ゼロベースで予算を検討して管理する考え方が注目されている。その手法とプロセスを詳しく解説する。

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 企業のIT部門やクラウドサービスを管理するチームは、「利益を生まずコストばかり掛かる存在だ」と社内で見なされることがある。そうした企業では、IT部門やクラウドチームは常に削減すべきコストを考えなければならない。この状況から脱却する方法として、予算管理をゼロベース(物事をゼロの状態から検討すること)で取り組むアプローチが注目されている。どのような手法で、どのようなプロセスで管理するのかを解説する。

ゼロベースの予算管理を実践する方法とは?

 M&A(合併と買収)支援サービスを提供するBeyond M&Aの元最高財務責任者(CFO)で、同社の戦略策定と価値創生のパートナーを務めるサイモン・ラトクリフ氏は、新たな予算管理手法として、「ゼロベースの予算管理」を提唱している。

 ゼロベースの予算管理では、部門や企業にひも付く費用を調査する。予算を追加する際には熟考し、その必要性や有用性を正当化しなければならない。予算の管理者は、最終予算案で各費用項目を含めた理由を説明する必要がある。

 「数値による裏付けがある予算はCFOにとってはありがたい。クラウドチームが率直に費用を提示して、その有効性について語れれば、CFOとの建設的な話し合いが可能になる」(ラトクリフ氏)

 IT部門であっても、財務部門であっても、予算の各項目を精査するのは時間を要する作業だ。それでも、ゼロベースの予算管理によって企業のキャッシュフローに対する重要な洞察を得られる可能性がある。

 「この作業は、『クレジットカードと銀行の明細書を確認して、全ての費用が自分の生活に価値をもたらしているかを考えてほしい』と依頼するようなものだ。価値をもたらさない費用は取り除けばよい」とラトクリフ氏は説明する。

 「IT部門は利益を生まずコストばかり掛かる」という見方にラトクリフ氏は異議を唱える。「IT部門自体が自社にもたらす価値に目を向け、『IT部門がXをすれば、Yという価値を提供できる』と主張しなければならない」(ラトクリフ氏)

ゼロベースの予算を策定する4つのステップ

 ゼロベースのアプローチを導入することに関心のあるクラウドチームに向けて、ラトクリフ氏は以下の手順を提唱している。

  1. 古い予算にはとらわれない
    • まず、前年度の予算を基準に新しい予算を策定するという悪習から抜け出すことが重要だ
    • 新しい予算策定は新しいスタートを切る好機と捉える
  2. 新しい基準を策定する
    • 社外のコンサルタントと契約するにせよ、社内のコスト管理を強化するにせよ、クラウドチームは変更を加える項目を見極める必要がある
    • 「どのようなリソースを利用しているのか」「そのリソースは何をしているのか」「どの程度の費用が掛かっているのか」などを確認する
  3. 隠れたコストや手数料、暴走するリソース、手数料などの費用を探す
    • 過剰支出が発生しやすい分野の費用を確認する
    • 特に、SaaS(Software as a Service)やソフトウェアの費用に過剰支出が生じやすい
    • クラウドサービスの費用は常に変化するため、予算サイクルの終わりまで調査を控える必要はない
  4. 各予算項目の有効性を示すチェックリストを作成する
    • チェックリストを、日常業務に必要な「必需品」とビジネスを強化または改善する「付加価値」の2つのカテゴリーに分類して作成する

 チェックリストの作成は、予算の各関係者がクラウドコストの価値を見極める機会になる。関係者が「クラウドチームは自動監視ツールやAI(人工知能)技術など、ビジネスに付加価値をもたらし、競争力を高めるツールやサービスを購入しているか」「クラウドチームは付加価値の有無をどのように判断しているか」といったことを考えることになるだろう

 クラウドチームは新しい予算を作成し、その内訳を詳細に分析したら、その予算に基づいて必要なリソースを説明できるようになる。費用を追加するプロセスがより厳密になるため、この手法は今後の予算策定において標準的な手法とすることが望ましい。


 次回はゼロベースの予算管理のメリットとデメリットを解説する。

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