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Qualcommが見据える「スマホで生成AIを動かす」のが主流になる日Snapdragonが体現するAI革命【後編】

PCやスマートフォンでもAI技術を利用するための手段が徐々に整いつつある。半導体ベンダーとしてその一躍を担うQualcomm Technologiesは、モバイルデバイスの利用体験が今後どう変わるとみているのか。

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人工知能 | x86 | ビジネスPC | CPU


 PCやスマートフォンの市場に、半導体ベンダーとしての視点で新たな風を吹かせているのがQualcomm Technologies(以下、Qualcomm)だ。エンドユーザーのデバイスでAI(人工知能)技術を活用する機運が高まる中、同社はモバイルデバイスの今後をどう見据えているのか。同社が2024年に主催したカンファレンスで、同社CEOや関連ベンダーの幹部が見通しを語った。

「PCやスマホで生成AIを動かす」のをなぜ重視するのか

 2024年10月に開催した年次カンファレンス「Snapdragon Summit 2024」でQualcommは、AI(人工知能)技術によってPCやスマートフィンの利用に大きな変化が訪れていることを強調した。MicrosoftのPC新ブランド「Copilot+ PC」の初期ラインアップにQualcommのNPU(Neural Processing Unit:ニューラルプロセッシングユニット)が採用されたことは大きな話題となったが、同社にとってのビジネスチャンスはそれだけはない。

 Qualcommのモバイル部門のグループゼネラルマネジャーであるアレックス・カトウジアン氏は、スマートフォンなどのモバイルデバイス用SoC(システムオンチップ)「Snapdragon 8 Elite」が、“新しい時代の基盤”となると強調した。

 Snapdragon 8 Eliteには以下が組み込まれており、デバイス上で生成AIの処理を実行することが可能だ。

  • Qualcommが買収したNuviaの技術をベースにした独自設計CPU「Qualcomm Oryon」の第2世代
  • GPU(グラフィックス処理装置)「Adreno」
  • NPU「Hexagon」

 イノベーションを実現するための土台には、MicrosoftやMeta Platforms、OpenAIといった企業とのパートナーシップがあると、QualcommのCEOであるクリスティアーノ・アモン氏は言及する。

 カンファレンスにビデオメッセージを寄せたMicrosoftのCEO、サティア・ナデラ氏は、コンピューティング技術が“新しい時代”に突入したことは疑問の余地がないと語った。特にエッジ(ネットワークの末端や、データが発生する場所の近くを指す)でのAIモデルの実行が重要になると強調。「バッテリーと容量というエッジ特有の制約はあるものの、レイテンシ(データが送信元から宛先に到達するまでにかかる時間)があまりなく、プライバシーとセキュリティを確保しやすいという利点がある」(ナデラ氏)

 エッジでAIモデルを実行という画期的な方法を実現し、ビジネスにおける生産性と創造性を高めるためには、クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングを連携させることが重要だとナデラ氏は指摘する。AIアシスタントツール「Microsoft Copilot」をエッジのさまざまなデバイスで実行できるようにすることも関しても、Qualcommとの共同の取り組みは重要なものだという。

 アモン氏は、AI技術は「空間コンピューティング」を変革する存在だと述べた。空間コンピューティングとは、物理的な空間とデジタル世界を融合させる技術や手法を指す。空間コンピューティングに関して同氏が言及したのは、Meta Platformsとのパートナーシップだ。その一環として同氏は、Meta PlatformsのMR(複合現実)技術「Meta Reality」を活用し、空間コンピューティングにAI技術を取り入れる取り組みに触れた。

 Meta PlatformsのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏もカンファレンスにビデオメッセージを寄せた。その中でザッカーバーグ氏は、Metaが開発したLLM(大規模言語モデル)「Llama 3.2」をSnapdragon搭載のモバイルデバイスで実行できるようにしたことに言及。「Llamaをモバイルデバイス上で実行できればAIモデルの応答を高速化し、プライバシーを確保して利用することが可能になる」と語った。

 Qualcommの取り組みの成果は、アジアの主要モバイルデバイスベンダーから上級職が登壇したことにも表れていた。Samsung Electronicsのプレジデント兼モバイルエクスペリエンスビジネス部門責任者のTM・ロー氏、Xiaomiのシニアバイスプレジデントのアダム・ゼン氏、Honor DeviceのCMO(最高マーケティング責任者)であるレイ・グオ氏といった面々だ。XiaomiとHonor Deviceは、Snapdragon 8 Elite搭載のスマートフォンとして「Xiaomi 15」シリーズと「Honor Magic 7」を発売することをそれぞれその場で発表した。

 アモン氏は、世界中の主要なAI関連企業がQualcommと共に未来を見据えているのだと述べた。AI技術の進歩はコンピューティング技術の役割を変え、それはPCやスマートフォンにおける利用体験の変容をもたらす。「Snapdragonが未来の利用体験を提供するための基盤となることで、不可能だったことを実現できるように努力を続ける」と同氏は語った。

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