旅行業界のAI活用と課題【後編】
むしろ顧客が離れる? 旅行業界のAI活用を阻む“特有の課題”とは?
旅行業界におけるAI技術の活用が広がっている。しかし専門家は、旅行業界にはAI導入を妨げる特有の課題があると指摘する。その内容とは。
人工知能(AI)技術の活用は、さまざまな業界で広がっている。旅行業界も例外ではなく、ダイナミックプライシング(需要と供給に応じて価格を変動させる手法)や顧客応対の自動化などの活用例がある。一方、ある専門家は、AI技術を使ったシステムの導入や運用には旅行業界特有の課題があると指摘する。
旅行業界“特有の課題”とは
併せて読みたいお薦め記事
連載:旅行業界のAI活用と課題
AIによる収益化アプローチ10選
1.データプライバシーとガバナンスの確保
適切なタイミングで適切なデータを収集することに加え、データの管理、安全性の確保が必要だ。調査会社Everest Groupのシニアアナリスト、カルティケイ・コーシャル氏は「旅行業界は膨大な顧客データを扱っている」と述べ、「データの保護やプライバシーの確保、法規制の順守が課題だ」と指摘する。
2.レガシーシステムへの対応
他業界と同様に、旅行業界ではレガシーシステムがしばしば使われる傾向にある。レガシーシステムはAIアプリケーションの実行に必要なデータの処理を妨げる恐れがある。調査会社McKinsey & Companyのパートナー、アレックス・コスマス氏によると、AIの性能を引き出すには、レガシーシステムからの脱却や新たなシステムへの投資が必要になる。
3.顧客データのサイロ化
顧客データのサイロ化(データの分散)も課題だ。ホテルが顧客体験を改善したい場合、顧客が利用する交通手段やアクティビティーの情報が必要になる。しかし顧客情報は、ホテルや航空会社それぞれが独自のシステムに保存しているため、データの連携に手間と時間がかかる。
4.“人間味のある接客”を好む顧客を失うリスク
顧客の中には、従業員との対面のやりとりを好む人もいる。「顧客応対にAI技術を導入することで、従来の接客に満足していた顧客を失うリスクがある」とコスマス氏は指摘する。旅行会社はAI技術を導入する際、そうしたリスクの緩和策を講じる必要がある。
5.顧客のセグメント化が困難
他の業界では、顧客を共通の特徴や嗜好に基づいてセグメント化し、それに応じたサービスを提供している。しかし「旅行業界では他の業界と比べて顧客のセグメント化が困難だ」とコスマス氏は述べる。旅行は顧客のニーズが多種多様で、出発地や目的地、時期、価格帯、グループの規模などさまざまな変数が存在する。
セグメント化したデータを用いて高度にカスタマイズしたサービスを提供すると、顧客が不快感を抱く恐れがあるとも同氏は指摘する。
6.ハルシネーション(幻覚)の生成
生成AIツールは事実と異なる情報を生成する「ハルシネーション」を起こす場合がある。2024年2月、ある顧客が航空会社Air Canadaを提訴した。同社のWebサイト上のAIチャットbotが顧客に誤った情報を提供したとして、航空会社の責任を追及したものだ。
ハルシネーションがもたらすリスクを理解し、問題が発生した場合の対処法や責任の所在を明確化しておくことが重要だとコーシャル氏は述べる。
7.人間ならではの創造性の欠如
AI技術を利用してサービスや製品をパーソナライズすることは可能だが、必ずしもAIが人間のように業務を処理できるわけではない。
アメリカ旅行アドバイザー協会(American Society of Travel Advisors)の広報副社長のエリカ・リヒター氏は、顧客の個別のニーズを把握し、創造性や共感力を発揮してユニークな旅行プランを作成する旅行代理店の重要性を強調する。こうした強みは、既知のデータセットを分析するだけでは得られないものだ。
TechTarget.AIとは
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Infroma TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget.AI
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
7
「IT運用・情報システム業務」に関するアンケート
-
8
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
9
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
10
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー