職務内容が“手探り状態”? 顧客体験を改善する責任者「CXO」の悩み:社内で影響力を発揮するには?
顧客体験や従業員体験の改善を担うCXOという役職がある。企業はCXOにさまざまな期待を寄せている一方、職務の遂行には課題もあるという。
チーフエクスペリエンスオフィサー(CXO)は、顧客体験(CX)や従業員体験の改善を担う役職だ。しかし、コンサルティング会社Deloitte傘下のDeloitte Digitalが米国企業のCX部門の責任者250人を対象に調査したところ、企業におけるCXOの採用は始まったばかりで、職務内容は手探りの状態だと分かった。
CXOはどのような職務に取り組むべきか。調査レポートの執筆に携わったDeloitte DigitalのCXO、アメリア・ダンロップ氏へのインタビュー内容を通じて、CXOの役割を探る。
CXOの仕事内容とは?
――CXOの一般的な職務はどのようなものですか?
一般的には、エンドツーエンドの顧客体験に責任を持つ最上級の役職者だ。コンタクトセンターを基点とする場合もあれば製品開発を基点とする場合もある。組織のイノベーションに関わる場合もある。
責任範囲や指揮系統もさまざまだ。最高マーケティング責任者(CMO)に指示を仰ぐ場合もあれば、CMOと同格の場合もある。私の考えでは、直接的な管轄に関係なく、組織全体に影響力を持ち、CEOや取締役会にCXの指標を報告し、顧客体験の改善に努める。顧客接点となるテクノロジープラットフォームの運営、顧客中心のビジョンの策定、全社的な文化の醸成にも責任を持つ。
――レポートによると、CXOは十分な支援や予算がない状態で変革を推進する必要があります。どのように変革を推進し、影響力を発揮するのですか?
CXOは就任した初期段階で、CXの改善とその効果を実証することが不可欠だ。そのために、指標の確立と効果の測定が求められる。CXに投資した結果、得られた効果や収益への影響をデータを用いて示す。それができない限り、組織に影響を与えることは難しい。
――レポートにある「本物らしく、透明で、人間的な」CXを作るには、どのようにテクノロジーを活用する必要がありますか?
業界を問わず、顧客と企業の接点は何らかのテクノロジーを介している。CXOは、顧客のニーズや体験を重視して商品やサービスを設計してきた。テクノロジーが進化し、複雑になるにつれて、顧客がそれをどのように使うか、使いやすさを向上させるためにはどのようにすればいいかを考えることが必要になった。
AI(人工知能)技術を使ってシステムを開発する場合は、開発ありきではなく、顧客や従業員の問題を解決できるかどうかを重視している。操作が複雑な電話応答システムや、顧客が“今クリックしたいボタン“を見つけにくいシステムであれば作らない。
――レポートは、CXOに「エッジコンピューティング」(端末の近くでデータを処理する手法)に関心を持つよう提言しています。なぜですか?
CXOは、常に次の展開やCXの改善方法を考えている。ITベンダーからは、音声認識や感情分析といった顧客の行動理解に関するテクノロジーの提案を受けている。エッジコンピューティングを使えば、顧客やデータの生成場所に近いところでデータをリアルタイムで処理できる。その結果、CXを向上させられる可能性がある。実際にエッジコンピューティングを使ってみて、CXは改善するのか否か判断する必要がある。
――CXOは、「ブロックチェーン」(複数のコンピュータで情報の正確性を確保する技術)やニューロモーフィックコンピューティング(人間の脳の構造や機能を模倣するコンピューティング技術)についても理解を深めた方がいいですか?
企業が必要とする能力があり、利用できるデータやチップがあり、エンジニアがアイデアを生み出せば、テクノロジーは開発できる。しかし「開発できるからといって、本当に開発していいのか」「顧客が心から求めているものは何か」を並行して考える必要がある。CXOは、テクノロジーの観点から可能なことと、顧客や従業員が望むことの両方を重視しておきたい。
――「自分は最大限の努力をしている。それにもかかわらず、組織の変革は遅々として進まない」と感じているCXOにアドバイスをお願いします。
諦めずに続けることを勧める。発展し続けるテクノロジーに精通しながらも、顧客や従業員への影響を考えることができる経営者の重要性は増している。CXという分野への需要も拡大していると考える。CX改善の価値を実証し、ビジネスを作り出し、その内容を報告できる人材は求められ続けるはずだ。
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