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AI PCなのに“AI専用チップ”は眠ったまま? 「Copilot+ PC」徹底レビューCopilot+ PCを2カ月使って分かったこと【第3回】

「AI PC」の核となる「NPU」は、AI関連の処理をこなすための強力な演算能力を備える。だが筆者が2カ月「Copilot+ PC」を使い続けても、実際の業務でNPUを活用できる場面はほとんどなかった。なぜなのか。

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 AI(人工知能)モデルの処理に特化したプロセッサ「NPU」(ニューラル処理装置)を搭載した「AI PC」の前途を切り開いたのが、MicrosoftのAI PCブランド「Copilot+ PC」だ。Microsoftは2024年5月にQualcomm Technologies(以下、Qualcomm)と共同でCopilot+ PC製品群を発表した。筆者はCopilot+ PCである「Dell XPS 13 9345」をDell Technologies(以下、Dell)から提供してもらい、2カ月間このPCだけを使って徹底的な評価することにした。

 NPU内蔵のノートPCが手に入ることになり、筆者はエンドユーザーとして興奮した。ところが実際のところ、NPUの活用機会は限られていた。なぜこのような状態になったのか。NPUが“期待外れ”で終わってしまう懸念はあるのか。

NPUは“期待外れ”か?

 タスクマネージャーでNPUの使用率をしばしば確認していたが、ほとんどの時間でNPUは待機状態だった。オフィススイート「Microsoft Office」のアプリケーションを多用する作業では、NPUが動き出したのは「Zoom Workplace」や「Microsoft Teams」といったコミュニケーションツールでビデオ通話をしたときだけだった。下の画面はNPU使用率のグラフを表示したものだ。カメラやマイクに特殊効果を追加する機能「Windows Studio Effects」とカメラを、有効にしたときと無効にしたときの使用率の変動が確認できる。

画面
画面 タスクマネージャーに表示されたNPU使用率グラフ《クリックで拡大》

 AI PCは始まったばかりだ。筆者の業務で使用するアプリケーションや機能は、ローカルでAIモデルを使う機能をまだ活用できていない。Copilot+ PCの発表時に紹介された、目を見張る数々の機能を筆者は全て熟知している。だが原稿執筆時点で、筆者の日常生活においてそれらの機能はいずれも特に役立っていない。

 ただしこれは、AI PCやNPUには価値がないという意味ではない。AIモデルをローカルで稼働させることが可能なデバイスが増えれば、その機能を活用するアプリケーションも増えることが見込まれる。現時点では、AI機能を活用するアプリケーションはそれほど多くなく、まだ整備段階だ。

バッテリー持続時間には疑問

 筆者は、Dell XPS 13 9345のバッテリー持続時間に関するレビューやマーケティング資料を目にしてきた。Dellは「XPS 13」シリーズのWebページに、「multi-day battery life」(数日持続するバッテリー)と記載している。筆者は比較対象になる、Intel製プロセッサ内蔵のWindows搭載PCを所有していないが、Dell XPS 13 9345のバッテリーは優秀だと感じる。カンファレンスに参加中したときに、充電目的の休憩を取る必要がなかった。ただし普段の業務における使い方では、バッテリーが24時間以上持続しそうにはなかった。

 バッテリー持続時間は一般的に、画面の輝度を特定の数値にしたり、無線LANとBluetoothをオフしたりといった、あまり現実的ではない条件下で測定する。Dellがユーザーをミスリードしていると言っているのではない。ハードウェアで実行できないアプリケーションをエミュレートしているときなど、使い方によってバッテリー持続時間は異なる可能性がある点を指摘しているだけだ。


 次回は、筆者がDell XPS 13 9345を使って感じたAI PCの3つのポイントを取り上げる。

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