AIモデルは「開発後」が肝心 実施すべき6つのアプローチとは?:AIモデル「最適化」戦略【後編】
AIプロジェクトでは、ただAIモデルを構築すれば終わりではない。むしろ「AIモデルの最適化」こそが成功を左右する鍵となる。具体的なアプローチを紹介する。
AIモデルの運用効率化や、プロジェクトの成果最大化を目指す上で、「AIモデルの最適化」は欠かせないプロセスだ。本稿は、押さえておくべき基本的なアプローチを6つ紹介する。
AIモデル「構築後」が肝心 実施すべき6つのアプローチ
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連載:AIモデル「最適化」戦略
AI開発に関する話題を解説
1.高品質データを用いたAIモデルの再学習
より正確で、現実世界の状況を反映したデータを用いてAIモデルの再学習を実施することは、最も基本的で効果的な最適化手法の一つだ。
ただし、再学習が効果的であるのは以下の場合に限られる。
- 初期の学習データの品質が高くなかった場合
- 初期の学習データが現実世界の状況を反映しなくなった場合
もともとの学習データにこれらの問題がない場合、再学習による制度改善の効果はあまり期待できない。
2.デプロイ手法の変更
AIモデルのデプロイ(配備)方法を変更することで、成果を最適化できる場合がある。例えば、結果を生成するスピードが遅い場合、より多くのリソースを持つハードウェアで再ホスティングすることで、スピードが改善する場合がある。
ただし、AIモデル自体の効率が悪い場合、このやり方は根本的な原因を解消するものではなく、あくまで一時的な対処に過ぎない。それでも、短期的な改善にはつながる可能性がある。
3.ソースコードの改良
AIモデルの設計や実装が不十分な場合、アルゴリズムのソースコードを変更することで性能が改善される場合がある。例えば、より効率的なライブラリ(プログラムの部品群)やフレームワーク(プログラム開発に必要な機能をまとめた枠組み)に切り替えることで、性能が改善されることがある。
ソースコードの修正には多大な労力が求められ、通常はその後にAIモデルの再学習も必要だ。そのため、AIモデルのアルゴリズム変更は慎重に実施すべきであり、その労力に見合う成果が得られると判断した場合にのみ実施すべきだ。
4.モデルプルーニング
モデルプルーニングとは、AIモデルから一部のパラメーター(モデルの振る舞いを決定する変数)を削除するプロセスだ。これによりリソース消費量の少ない小型モデルを作成することができる。想定するユースケースに必要のないパラメーターがAIモデルに含まれる場合、モデルプルーニングを実施することで、AIモデルの効果を損なうことなくパフォーマンスを向上させることが可能だ。
5.データセットの蒸留(Distillation)
データセットの蒸留とは、大規模なデータセットをより小さなデータセットに統合するプロセスを指す。これにより、AIモデルが処理するデータ量は減少し、効率的な学習が期待できる。
ただし、既にデプロイ済みのAIモデルには、蒸留のプロセスは直接的な効果をもたらさない。それらのAIモデルは既に学習済みだからだ。しかし、再学習の際は、学習データが減ることでトレーニングの効率が向上するため、AI最適化戦略の一環として有効だ。誤ったデータや重要性の低いデータの除外にもつながり、再学習後のAIモデルがより効果的な意思決定をできるようになる可能性もある。
6.正則化(Regularization)
AIモデルが効果的に機能するためには、取り込むデータに正しく適合できなければならない。AIモデルがデータを効果的に解釈できない場合、それはアンダーフィッティング(過小適合)だ。AIモデルが一貫性のない解釈をする場合、つまり、正確にトレーニングされていても現実世界の入力に基づいた正確な意思決定をしない場合、それはオーバーフィッティング(過学習)だ。
正則化は、アンダーフィッティングとオーバーフィッティングの両方の対処に有用だ。本質的に正則化は、モデルが異なるタイプのデータに割り当てる重みを修正し、データを正確に解釈する能力を向上させる。
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