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「PyTorch」「TensorFlow」は何が違う? 深層学習ライブラリの失敗しない選び方:PyTorchとTensorFlowを比較【後編】
AIモデル活用で欠かせない「PyTorch」と「TensorFlow」は、オープンソースの深層学習フレームワークだ。両者は何が異なり、どのように使い分ければよいのか。自社に合うライブラリの見極め方とは。
AI(人工知能)モデルを開発する上では、「PyTorch」「TensorFlow」といった深層学習(ディープラーニング)モデル開発のための機械学習フレームワーク(特定の機能を持つプログラムの開発を支援するプログラム部品やドキュメントの集合体)を活用することが重要だ。これらのライブラリは、オープンソースであったり、プログラミング言語「Python」で実装されていたりといった共通点を持つ一方で、異なる特徴を持つ。両者はどう違い、どのように使い分ければよいのか。
PyTorchとTensorFlowの違い
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連載:PyTorchとTensorFlowを比較
AIエンジニアが身に付けたいスキル
PyTorchの強み
TensorFlowと比較すると、PyTorchは以下の点で優れている。
- 「動的計算グラフ」機能の充実
- 動的計算グラフは、プログラム実行中に処理手順を変更できる方式のこと。
- PyTorchは動的計算グラフを重視した設計になっている。TensorFlowでも動的計算グラフを利用できるが、変更に制約があり、場合によっては動作確認が困難だ。
- Pythonとの親和性
- PyTorchは、Pythonの設計思想に沿って開発されている。シンプルで一貫した構文を採用しており、初心者にも扱いやすい。
- TensorFlowもPythonを基盤としているが、構文の一貫性に欠け、初心者にとって直感的ではなく学習が難しいという意見がある。
- 活発なコミュニティー
- PyTorchは活発なコミュニティーを有する。開発者がPyTorchをユーザーフレンドリーと評価されていることがその理由だ。
TensorFlowの強み
PyTorchと比較すると、TensorFlowは以下の点で優れている。
- 「静的計算グラフ」機能の充実
- 静的計算グラフは、プログラムの実行前に計算手順を確定させる方式のこと。
- TensorFlowの静的計算グラフによって、開発者は初期段階から計算グラフ(プログラムの処理手順を図式化したもの)の構造を把握でき、計算グラフの構造や計算リソースを計画的に最適化できる。こうした作業は、PyTorchの動的計算グラフでは難しいことがある。
- 複数プログラミング言語での利用
- PyTorch、TensorFlow共にPythonで扱えるが、TensorFlowは「C++」や「Java」など他のプログラミング言語でも扱うことが可能だ。
どちらを使うべきか
両者の用途は重複する部分があり、どちらを使用しても深層学習モデルを開発できるが、それぞれ特定のシナリオでの強みを持つ。
PyTorchが適する場面
次の要素を重視する場合、PyTorchを使うべきだ。
- 使いやすさ
- 深層学習の初心者にも理解しやすく、学習しやすい設計となっている。
- 迅速なテスト
- 動的計算グラフによって、効率的なプロトタイピングや反復テストを実施できる。
- Pythonとの親和性
- 標準的Pythonフレームワークの設計に類似しているため、Python開発者にとってなじみやすい。
TensorFlowが適する場面
以下を優先する場合、TensorFlowを使うのが望ましい。
- 機械学習モデルの処理性能
- 静的計算グラフは、開発段階で処理効率の最適化が可能であり、モデルの性能向上に寄与する。
- Python以外のプログラミング言語での利用
- TensorFlowはPythonだけではなく、C++やJavaといった他のプログラミング言語でも使用可能だ。多様なプログラミング言語で作業する場合や、Python以外のプログラミング言語で開発したアプリケーションと連携させたい場合に役立つ。
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