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CiscoのDPU搭載「スマートスイッチ」は何がすごい? そのAI向け機能とはこれからのネットワーク刷新のポイントは

Cisco Systemsは、企業がAIモデルの運用に向けてネットワークを刷新するトレンドの中、新たな「スマートスイッチ」シリーズを発表した。AI向けにどのような技術が搭載されているのか。

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 ネットワーク機器ベンダーのCisco Systemsは2025年2月11日(現地時間)、半導体ベンダーAdvanced Micro Devices(AMD)のDPU(Data Processing Unit、データ処理装置)「Pensando DPU」を搭載したスマートスイッチを発表した。このスイッチは、セキュリティやネットワークサービスなど、さまざまな機能をスイッチで実行可能にしていることが特徴だ。

DPU搭載の「スマートスイッチ」は何がすごい?

 Ciscoが発表したスマートスイッチ「Cisco N9300」シリーズには、プログラム可能なネットワークプロセッサ「Cisco Silicon One E100 ASIC」が搭載されており、サーバラックの最上部に配置されるトップオブラック(ToR)スイッチとして設計されている。Cisco Silicon One E100は以下のような特徴を備える。

  • 4.8Tbpsの処理能力
  • 高度なテレメトリー(ネットワーク機器の監視)
  • 通信のリアルタイム暗号化
  • AMDのDPUとの統合機能

 DPUを搭載したデータセンター向けスイッチを提供するのは、Cisco Systemsが初めてではない。2021年にはHewlett Packard Enterprise(HPE)がファイアウォール、暗号化、ロードバランシング(負荷分散)などのネットワークおよびセキュリティサービスを提供するスイッチとして、Pensando DPUを採用した「Aruba Networking CX 10000」シリーズを発表していた。

 AMDは、2022年にネットワークサービスベンダーのPensandoを19億ドルで買収。当時Pensandoは、IntelやNVIDIAのDPUと競合する、プログラム可能なネットワーク向けのプロセッサを開発していた。

 Cisco Systemsは、企業からの需要が十分に高まるまで、DPU搭載スイッチの提供開始のタイミングを待っていた。「データセンタースイッチにおけるDPUの活用はまだ初期段階であり、ユースケース(想定される使用例)は今後も進化し続ける」と、同社はメールでの声明で述べている。「Cisco Systemsは、顧客のニーズに適したタイミングで確実に価値を提供することを重視している」

 Cisco Systemsのスマートスイッチは、「Hypershield」と呼ばれる分散型セキュリティアーキテクチャを実行する。これはDPUと「eBPF」(extended BPF)を活用したものだ。eBPFは、「Linux」カーネル内の仮想マシンで、開発者が小さな専門化されたプログラムを記述できるようにする。Hypershieldは、大量のセキュリティデータを自動的に分析し、推奨事項やインサイト(洞察)を提供する。アプリケーションのプロセスの可視化も可能だ。

 ITコンサルティング会社Enterprise Management Associatesのアナリスト、シャマス・マクギリカディ氏は、「スマートスイッチの全てのポートがネットワークセキュリティの適用ポイントとなる」と指摘する。「スマートスイッチは、AI(人工知能)技術のように低遅延が求められるアプリケーションにとって、より効率的なトラフィック(ネットワークを流れるデータ)のフローを実現する」

AI時代に向けたネットワークの刷新

 スマートスイッチは、企業がAIモデルを実行するために、ネットワークを刷新する際の有力な選択肢となる。ハードウェア自体はAI専用ではないが、GPU(グラフィックス処理装置)クラスタ上で動作するAIアプリケーションのトラフィックをルーティングする役割を担う。現在、大規模なAIモデルを運用しているのは、金融機関、大手製薬会社、クラウドベンダーといった組織だ。

 米Informa TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のプリンシパルネットワーキングアナリスト、ジム・フレイ氏は「AI技術はデータセンターやエッジ(データの発生源であるデバイスの近く)を含む、あらゆるネットワークインフラに大きな影響を与えている」と述べる。「誰もが、AI時代に向けてどのように準備すべきかを考えている」

 クラウドベンダーなどのハイパースケール(大規模)データセンターを持つ企業は、長年にわたってDPUを活用したネットワークセキュリティサービスを導入してきた。Cisco Systemsは、特定のユーザー企業向けに、オープンソースのネットワークOS「SONiC」が、独自プロセッサ「Silicon One」で動作するスイッチ「Cisco 8000」シリーズを提供している。SONiCはMicrosoftが開発したもので、ハイパースケールデータセンター向けに最適化されている。「Cisco Systemsは、Silicon Oneをハイパースケーラー向けに販売する中で得た知見を生かし、それを一般企業向けに最適化した」とフレイ氏は述べる。

 Cisco Systemsのスマートスイッチは、データセンター向けネットワークOS「NX-OS」上で動作し、統合プラットフォーム「Nexus Dashboard」によって管理される。Nexus Dashboardは、データセンターネットワークの管理、監視、運用が可能で、ライフサイクル管理やポリシーの一元管理といった機能も提供する。

 Cisco Systemsによると、将来的にはDPU上で、以下のようなネットワークおよびセキュリティサービスを実行できるという。

  • ネットワークアドレス変換(NAT)
  • IPsec(Internet Protocol Security)暗号化
  • アプリケーションの負荷分散
  • イベントベースのテレメトリー
  • DDoS(分散型サービス拒否)攻撃対策

 同社は、特定業界のユーザー企業向けに、独自のカスタムサービスをDPUで動作させる機能も検討しているという。Cisco Systemsは、最初のCisco N9300を2025年の春に出荷する計画だ。

(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)

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