AIでもクラウドでもない、2025年IT投資の「隠れた本命」とは?:IT投資の増加傾向は続く
AI技術やセキュリティ、クラウドインフラへの投資が引き続き重要視されている一方で、IT予算の大きな負担となっている“隠れた問題”がある。IT部門に求められることとは。
調査会社の予測によれば、2025年は人工知能(AI)技術やセキュリティ、クラウドインフラへの投資によって世界のIT支出は加速する。その一方で、目立ちにくい存在ではあるが、IT部門が対処しなければならない喫緊の問題として大きくなってくる課題もある。
AIでもクラウドでもない? 2025年IT投資の「隠れた本命」
市場調査会社Forrester Research(以下、Forrester)の調査レポート「Global Tech Market Forecast, 2024 To 2029」(2024〜2029年のグローバル技術予測)によれば、2025年の世界のIT支出は4.9兆ドルに達し、AI技術、サイバーセキュリティ、クラウドインフラへの投資が加速するとみられる。テキストや画像などを自動生成するAI技術「生成AI」、サイバーセキュリティ、クラウドサービスが成長をけん引し、2025年のIT支出は5.6%増加する見込みで、2024年の4.6%増からさらに加速する。
欧州の2025年のIT支出は、5%増の見込みで、国内総生産(GDP)比で見ると、米国やアジア太平洋地域よりも少ない。Forresterの調査によれば、2024年の世界のIT支出のうち米国が41%を占め、AIソフトウェア支出の46%を担っていた。2015年から2023年にかけて、時価総額の成長が速かった上位24社のうち、約70%が米国企業であり、そのうち半数以上がメディアや情報関連企業だった。
Forresterの予測では、アジア太平洋地域のIT支出は2025年に5.6%成長する。この地域では、インド、フィリピン、ベトナム、インドネシアといった国を中心に、世界平均を大きく上回る実質GDP成長率が見込まれている。中国とインドの政府主導の施策や、日本と韓国における生成AIや半導体への投資拡大が、IT支出を押し上げる要因となる。特にインドは、2025年のIT支出が9.6%増という顕著な成長率を示す見通しだ。
Forresterによると、2025年の世界のIT支出のうち、ソフトウェアとITサービスが合計で66%を占める見込みだ。これは、セキュリティサービスへの投資増加や、レガシーシステムのモダナイゼーション(最新化)が進むためだという。ソフトウェア分野単体では10.5%の成長率が見込まれており、2029年までにIT支出の増加分の60%を占めると予測され、最も成長の速い分野となる。
Forresterのシニア予測アナリストを務めるマイケル・オグラディ氏は、「今後5年間で、IT投資が前例のないスピードで産業を変革する」と述べる。同氏は、企業や政府によるソフトウェア支出が2029年までに世界のGDPの1.7%に達し、2016年のほぼ2倍になると予測している。「生成AIは、よりパーソナライズされたバーチャルアシスタントやカスタマーサービスにより、顧客体験を向上させ、金融サービス、メディア、小売業などの分野で革命をもたらすだろう」(オグラディ氏)
オグラディ氏によると、成長が見込まれる分野の一つにITコンサルティングとシステム統合サービスがあり、世界のIT支出の19%を占める。テクノロジーのアウトソーシングとハードウェアの保守がIT支出の15%を占め、「IaaS(Infrastructure as a Service)の成長が、コンサルティングサービスの成長を上回る」と同氏は述べる。
セキュリティとAI分野に重点的に投資する企業は、競争力を強化するとともに、持続的な成長を遂げると同氏は指摘する。
その一方で、企業はレガシーシステムの管理と技術的負債(先送り作業)の削減にも取り組む必要があると、オグラディ氏は警告する。「現在も世界のIT支出の3分の2がレガシーシステムに費やされている。ITスキルの半減期が5年未満であることを考慮すると、技術者のスキル更新が不可欠だ」(オグラディ氏)
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
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