メタバースは衰退しても「仮想空間とAIの融合」が相乗効果を生む?:メタバース×生成AIの光と影【中編】
デジタルツインとAI技術を別々に使用するのではなく、両者を組み合わせることで、相乗効果が生まれる可能性があるとコンサルティング会社McKinseyは主張する。どのような効果があるのか。
生成AI(AI:人工知能)の登場に伴い、仮想空間「メタバース」への関心は薄れたという見方がある。一方でXR(Extended Reality)やデジタルツイン(現実の物体や物理現象をデータで再現したもの)などがAI技術と組み合わされば、相乗効果を生む可能性がある。どのような効果が見込めるのか。
「仮想空間とAIの融合」が生む相乗効果とは?
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コンサルティング会社McKinseyの専門家は、一部の企業は生成AIとデジタルツインを別々に導入済みだと指摘する。ただし同社のレポート「Digital twins and generative AI: A powerful pairing」によると、生成AIとデジタルツインを組み合わせることで、デジタルツインの開発の迅速化やコスト削減など、それぞれの技術を単独で使用する以上の価値を生み出すことが可能だ。
同レポートの著者は、デジタルツインが現実世界の状況を再現し、将来の出来事を予測するための「早期警戒システム」として機能すると考える。一方、リスクのない空間でさまざまな検証ができる「デジタル実験室」としての機能も強調している。
McKinseyによると、デジタルツインの開発者は、以下の用途でデジタルツインとAI技術を活用できる。
- 汎用(はんよう)モデルの作成
- 細かくカスタマイズされたデジタルツインの作成には時間と投資を要するが、基礎的な汎用モデルは大規模言語モデル(LLM)を使うことで作成できる。
- データの収集、転送、拡張
- デジタルツインの作成にはさまざまなデータが必要だ。LLMは重要な情報を保持しながらデータを大幅に圧縮することに活用できる。
- インタフェース
- LLMを使えば、デジタルツインでのシミュレーションのためにさまざまなシナリオを作成したり、デジタルツインからシミュレーション結果を得たりできる。
- 生成AIの機能検証
- 現実世界のデータを基に仮想空間を構築するデジタルツインでは、AIモデルの学習、結果の微調整、検証や改善を安全に実施できる。
専門家は「デジタルツインと生成AIの相乗効果によって、両者のスケーラビリティ(拡張性)、アクセシビリティー(利用しやすさ)が向上し、費用を削減できる」と結論付ける。
企業は仮想空間を作成するためにAI技術を活用し始めている。CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアベンダーAutodeskのCTO(最高技術責任者)であるラジ・アラス氏は「業界の専門知識とAI技術の研究によって、高精度なCADジオメトリ(図形)を実現できる」と言う。その上で、AI技術が将来のXRアプリケーションとデジタルツインにおいて重要な役割を果たすことを示唆する。
次回は、AI技術とXRを組み合わせる上での注意点を解説する。
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