紙ベースの業務からの卒業 文書管理システム導入までに検討すべき課題7選:文書管理を効率化
伝票や従業員名簿、引継ぎ資料など業務で利用する文書データは多岐にわたる。「DMS」を使えばそれらを電子化し、紙ベースでの管理から脱却できる。業務効率化にも有効だが、導入時に解決すべき7つの課題がある。
紙ベースで業務を遂行している企業では、情報の追跡や保管、検索がしにくいといったことが課題になる。このような課題を解消するのが「文書管理システム」(DMS)だ。DMSは、スキャナーや光学文字認識(OCR)を使って紙文書を電子化し、一元管理する。 業務効率化にも効果がある一方で、解決すべき課題もある。DMSを導入する上での課題には他にどのようなものがあるのか。7つ紹介する。
文書管理システム導入の課題7選
1.企業や部門固有のルールに沿った文書管理
DMSを利用するに当たっては、記録管理や法務、IT部門が協力して、導入から運用までを担う専門部門を設立することも有効だ。文書管理には企業や部門ごとに独自のルールがある。そうしたルールや利用者のフィードバックを専門部門が取りまとめることで、実態に合ったDMSを導入、運用できる。
従業員が使いやすいと感じるようにDMSを運用することも重要だ。IT部門にとっては問題がないシステムでも、従業員が「使い勝手が悪い」と感じればシステムの導入は失敗に終わる恐れがある。
2.規制要件の順守
業界や企業ごとの文書保管の慣例や規制要件を順守する必要もある。例えば以下のような法規制だ。
- EU(欧州連合)の「GDPR」(一般データ保護規則)
- 「HIPAA」(米国医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)
- 国際標準化機構(ISO)が定める各種規格
各種規制に対応できない場合、罰則の他、企業としての評判の低下、売り上げの減少といったリスクがある。そのようなリスクを最小限に抑えるため、文書管理に以下の仕組みを適用することが重要だ。
- 監査証跡の管理
- データの暗号化
- アクセス制御
コンプライアンス研修や監査を定期的に実施することで、最新の法規制や業界標準に適合しているかどうかを確認でき、必要に応じて改善が可能になる。
3.システム間の連携
ERPや顧客関係管理(CRM)システム、クラウドストレージなど、導入済みのシステムとDMSを連携できるかどうかも確認が必要だ。システム同士が連携できていない、データのサイロ化(連携せずに孤立した状態になること)が起こっているといった状況は、DMS導入の障壁になる。この問題が、業務の非効率性や運用コストの増大、セキュリティやコンプライアンスのリスクにつながる。
既存のシステム同士を連動させる場合は、柔軟な統合機能やAPIのサポートを提供するDMSを探すのもいいだろう。その際、現在利用しているレガシーシステム(ERP、CRMなど)がその新しいDMSに移行可能かどうかを評価することも重要だ。
4.残った紙文書の管理
DMSの導入を決めたとしても、既存の業務プロセスの遂行や、新たな業務プロセスに対する従業員の抵抗、紙データの保存に関する規制要件から紙文書が蓄積される可能性がある。
こうした場合、紙ベースの記録への依存を減らすため、法務や記録管理に関する部門と協力して紙文書の電子化を進めるのが望ましい。利害関係者と協力することで、紙文書の電子化、保持、文書破棄に関するポリシーを作成できる。
5.バージョン管理
文書のバージョン管理が十分にできていない企業では、同じ文書のさまざまなバージョンがバラバラになった状態で保存される。最新版ではないバージョンの文書で従業員が作業すれば、情報が重複した(もしくは古い情報を基にした)ファイルが作成され、混乱が生じる。
このような事態を避けるには、バージョン管理機能を持つDMSを実装することが有用だ。変更の追跡や重複の防止、編集履歴の記録が可能となる。DMSの導入に当たっては従業員の使いやすさを優先し、利用を促す必要がある。文書の管理はDMSで完結させ、ローカル端末のストレージに保存したり、ファイルを管理する目的でメールに添付したりするといった使い方は避けるよう従業員に通達する。
6.機密情報の保護
財務記録や従業員データ、顧客情報といった機密情報を不正アクセスから保護することも重要だ。アクセス制御の脆弱(ぜいじゃく)性や人的ミス、サイバー攻撃は不正アクセスのきっかけになり得る。
これらのリスクを軽減するため、厳格なユーザー権限の付与や、保存データと転送データの暗号化、多要素認証(MFA)を有効にすることが重要だ。定期的なセキュリティ監査と従業員研修を実施することも、文書セキュリティの強化につながる。
7.アーカイブデータの保存と検索
アーカイブデータを適切に管理し切れていない、検索機能が十分に機能していない企業では、過去のデータを検索するのに苦労する恐れがある。
高度な検索機能を備えたDMSがあれば、そうした文書検索を効率化できる。以下の機能を利用して、アーカイブデータの保存に関する戦略を構築することも有効だ。
- メタデータの付与やタグ付け
- 自動保存
- 訴訟に備えたデータの保存
業務で使う見通しがないデータを自動的に削除する機能を使うことも、検索結果の改善につながる。
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