もはやIT部門に欠かせない「自動化ツール」 失敗しない選び方は?:自動化とオーケストレーションの違い【後編】
自動化やオーケストレーションの導入を成功させる鍵の一つは、適切なツール選びにある。製品選定を誤ればメリットが薄れるどころか、業務全体に悪影響を及ぼす恐れもある。ツール選びのポイントとは。
IT部門が「自動化」や「オーケストレーション」の手法を取り入れ、その導入効果を最大限に引き出すためには、自社に適したツールを選定することが欠かせない。とはいえ製品の種類は多岐にわたる。選択を誤れば導入効果が薄れるばかりか、かえって業務に混乱を招く恐れもある。自社に最適なツールを見極めるためのポイントを押さえておこう。
自動化とオーケストレーションの最適なツールの選び方
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連載:自動化とオーケストレーションの違い
IT自動化の本質
自動化とオーケストレーションのツールは市場にあふれており、最適な製品を選ぶのは簡単ではない。ツールの選択を誤れば、時間やコスト、労力が無駄になるばかりか、大きな混乱を招く可能性もある。最善の選択をするには、次のような考慮事項を押さえておくとよい。
ビジネスニーズ
まずは自社のビジネスニーズを明確にした上で製品選定に着手することが重要だ。そうすることで、要件に合わない製品を早い段階で候補から除外できる。
自動化やオーケストレーションの対象が、どの程度の規模や複雑さになるのかを把握することも欠かせない。例えば、一部の企業にとってはシンプルな自動化ツールだけで十分な場合もあるが、より複雑で部門横断的なプロセスに対応するために、高度なワークフローを処理できる包括的なオーケストレーションが必要な場合もある。
連携
オーケストレーションツールは、単体で完結することはほとんどない。通常は社内の他のシステムやアプリケーションと連携させて使用する。連携の対象には、監視ツールや変更管理システム、データベースなどが含まれる。こうした連携は、自動化ツールやオーケストレーションツールが、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)やその他のコネクタを通じて標準で連携可能になっていると迅速に進みやすい。仮にそれが難しい場合でも、カスタムAPIや独自コネクタを開発できる柔軟性が求められる。そうでなければ、企業の自動化および統合の取り組みが制限され、期待される効果が十分に得られない可能性がある。
スケーラビリティ
自動化やオーケストレーションによるタスクは、導入初期はシンプルでも、時間の経過とともに複雑化していく可能性が高い。選定する製品が、そうしたタスクの拡張や高度化に対応できる特性を備えているのかどうかを、事前にしっかりと調査しておくことが重要だ。これは、製品を長期にわたって安定して運用し続けるための非常に重要な要素となる。
コンプライアンス
自動化とオーケストレーションは、企業のセキュリティ体制やコンプライアンスの維持において、重要な役割を担う。これらの技術は、企業が一貫性のある、反復可能な方法で業務を遂行していることを保証する基盤となる。選定するツールが、自社のセキュリティポリシーや業界ごとのコンプライアンス要件に合致するものかどうかを確認しておく必要がある。
難易度
新しいツールを導入する際には、操作方法の習得に時間がかかるのが通例であるため、ツールの使いやすさを事前に評価しておくことが重要になる。ベンダーが提供するドキュメントやサポート体制、対応するスクリプト言語、インタフェースの分かりやすさなどを確認するようにしよう。最終的な導入判断を下す前には、実際に使用するスタッフに製品を試してもらい、使い勝手や好みについてフィードバックを得ることが望ましい。
レポート機能
自動化やオーケストレーションのツールには、ワークフローの実行状況を可視化するための詳細な監視機能とレポート機能が求められる。具体的には、成功率や失敗率、処理時間などのパフォーマンス指標を把握できる必要がある。セキュリティ対策や監査対応、コンプライアンスなどの観点から、自動化スクリプトやオーケストレーションに対する変更内容を記録として残すことが不可欠だ。そのためには、バージョン管理機能や変更管理機能を備えていることも重要な要件となる。
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