「Microsoft 365 Copilot」で業務はどれだけ短縮できる? 実験が示す真の効果:2万人の実証実験から分析
英国政府は、公務員を対象にした大規模実験で「Microsoft 365 Copilot」の効果を測定した。具体的にどの程度の時間削減が見込めることが分かったのか。特に効率化が期待できる業務とは何か。
英国政府は、2024年9〜12月に、2万人の公務員を対象にAI(人工知能)アシスタント「Microsoft 365 Copilot」活用の実証実験をした。その結果、文書の起草やメールの要約、データの更新、報告書の作成といった日常業務の効率が向上することが分かった。どの程度の効率化が見込めるのか。
削減が見込める業務時間はどのくらい?
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AI技術による業務効率化の事例
実証実験の結果からは、1人当たり1日平均26分、年間約2週間分の業務時間を削減できる可能性が示された。具体的な活用例として、英国会社登記所はMicrosoft 365 Copilotを活用し、公務員による定型的な顧客対応や回答案の作成、記録更新の迅速化を図った。労働年金省は、就職支援担当者が求職者一人一人に合わせた助言をするためにMicrosoft 365 Copilotを利用した。この実証実験に参加したのは、歳入関税庁(HMRC)や内務省(HO)、法務省(MoJ)をはじめ、複数の政府機関の職員だ。
今回の実験結果は、AI技術に関する国立研究所Alan Turing Instituteの調査報告と一致する。同研究所は、英国国家統計局(ONS)が2024年2月に公務員1513人から収集した勤務日誌のデータを分析した。その結果として、画像やテキストを自動生成するAI技術「生成AI」が公共部門における業務の最大41%を支援し、大幅な時間短縮に貢献する可能性があると指摘している。
Alan Turing Instituteの調査報告によると、生成AIは管理業務の割合が高い職務で特に有用だ。調査対象の公務員はメール処理に1日平均30分を費やしていたが、その大部分は定型業務であり、人による判断や監督をほとんど必要としないものだった。同研究所は、生成AIをメールの下書き作成に活用することで、この時間を70%削減できると見積もる。
高まる期待と今後の課題
今回の実験結果を受けて、関係者からはAI技術の本格導入に期待を寄せる声が上がっている。
英国技術担当大臣のピーター・カイル氏は、実験結果に次のコメントを寄せる。「今回の結果は、AI技術が現時点でわれわれに十分な利益をもたらすものであることを示している。AI技術は文書作成や定型業務の削減で公務員の時間を節約し、本当に重要な業務に集中することを支援する」
カイル氏は、AI技術が政府の運営方法に変革をもたらし、公務員の業務効率化を後押しすることで、非効率な手続きを削減し、税金の有効活用につながるとの考えを示す。
非営利組織Tony Blair Institute(TBI)で政府イノベーション政策担当ディレクターを務めるアレクサンダー・イオサド氏は、今回の実証実験を受けて、政府機関のあらゆる領域でAI技術を導入することの正当性が明確になったと考える。「AI技術を中核に据えて業務を再構築すれば、巨額の経費削減が可能だ。実証実験から本格導入へと迅速に移行し、公務員が本来の業務に集中できる環境を整えるべきだ」と同氏は主張する。
一方、Alan Turing Instituteで公共サービス向けAI技術の研究員を務めるユムナ・ハシェム氏は、AI技術による効率化の可能性は認めつつも、導入に当たっての注意点を指摘する。それは、公共部門の業務が持つ複雑性を考慮し、安全かつ責任ある方法でAI技術を組み込むという点だ。その上で同氏は、公務員が安心してAI技術を使えるよう、十分な研修と安心して利用できる体制を提供できれば、公共部門の時間の使い方が大きく変わる可能性にも言及する。
実験期間中にMicrosoftは、Microsoft 365内のAI機能を既存のナレッジやデータソースと連携させ、ビジネスプロセスの自動実行を可能にするエージェント機能を導入したが、今回の実験での正式な分析対象には含まれていない。ただし複数の英国省庁がこの機能に関心を示しており、今後のAI技術活用のさらなる可能性が示唆されているという。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。