検索
特集/連載

いまさら聞けない「QoS技術」とは ネットワーク性能を高める“3つの仕組み”快適なネットワークの設計戦略【第3回】

ネットワークの信頼性を高める上で欠かせないのが、トラフィックの優先制御を担うQoS(Quality of Service)だ。通信の遅延や輻輳を防ぐために押さえておくべきQoSの要素とは。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 業務停止やサービス遅延を防ぐ上で鍵になる要素の一つが、ネットワークを安定的に運用することだ。ルーティングの観点からネットワークの信頼性向上の要素を解説した第2回「ネットワークパフォーマンスを高める『ルーティング』の基礎知識」に続き、本稿はQoS(Quality of Service)に焦点を当てる。

ネットワークの品質を左右する基本概念:QoS

 QoSは、ネットワークの輻輳(ふくそう)を管理し、重要なトラフィックを優先処理することで信頼性を確保し、パフォーマンスを向上させるための仕組みだ。輻輳を制御する代表的なQoS技術は次の通り。

  • キュー管理
  • トラフィックシェーピング
  • 帯域幅ポリシング

キュー管理

 キュー管理は、輻輳時に一部のトラフィックを一時保存し、その他のトラフィックを優先的に通過させることでフローを最適化する技術だ。例えばVoIP(Voice over IP)などのリアルタイム通信を他のトラフィックよりも優先する「低遅延キューイング」など、さまざまな方式が存在する。

トラフィックシェーピング

 トラフィックシェーピングは、過剰なパケットを一時的にバッファリングし、制御された速度で送信することでトラフィックを調整する手法だ。これにより、ルーターに負荷を与えかねない突発的なトラフィックの急増を防げる。

 QoSポリシーが正しく機能していることを確認するには、パケットキャプチャーツール「Wireshark」の「I/O Graphs」(I/Oグラフ)機能でトラフィックパターンを可視化する。グラフで可視化し、そこからパケットロスやレイテンシスパイク(遅延の急増)といった異常を特定するのが有効だ。

画像
図 WiresharkのI/Oグラフを使用したトラフィックシェーピングの可視化(画像は筆者が取得)

 図は、テスト環境でトラフィックシェーピングをシミュレートした例だ。まず、ルーターのスループット上限を800kbpsに設定した。この値はあえて低めに設定しており、実運用環境ではより高いスループットが見込まれる。次に、オープンソースのテストツール「iPerf」で、800kbpsを超える帯域幅で2台のエンドデバイス間でスループットテストを実施した。最後に、WiresharkのパケットキャプチャーフィルターでiPerfパケットのみを抽出した。

 120秒経過直後に一時的なトラフィックスパイクが見られたが、その後はおおむね800kbpsで安定した。この結果は、QoSポリシーが正しく機能し、トラフィックフローを制御していることを示している。

帯域幅ポリシング

 帯域幅ポリシングは、帯域幅の上限を強制的に制限し、超過するパケットを破棄または再マーキングする技術だ。帯域幅ポリシングはバッファリングを実施しない点が特徴だ。

 例えばISP(インターネットサービスプロバイダー)は、契約した帯域幅(例:100Mbps)を超える通信に追加料金を課す場合がある。追加料金を回避するため、100Mbpsの上限を厳密に適用するような設定が推奨される。


 次回はマイクロサービスにおけるネットワーク信頼性向上の要素を仮設する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る