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「データはどう流れるのか」――OSI参照モデルで“通信の仕組み”を解説ネットワークとOSI参照モデルの基礎【第4回】

ネットワークやシステムの運用に携わる場合、理解しておいた方がよいのが「OSI参照モデル」の仕組みだ。今回は複数のレイヤーにまたがる技術や、データがレイヤーを通じてどう流れるのかを解説する。

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 通信の仕組みを7つのレイヤー(階層)に分類する「OSI参照モデル」は、ネットワークやシステムの運用において欠かせない基礎知識だ。第2回「『OSI参照モデル』完全ガイド――“7つの階層”それぞれの機能とは?」では、各レイヤーの役割や仕組みを紹介した。第3回となる本稿では、複数のレイヤーにまたがって動作する仕組みや、データが送信元から宛先へとどのように流れるのかを見ていく。

複数のレイヤーにまたがる技術や仕組み

 OSI参照モデルでは、レイヤーごとに機能を分けて考えるのが基本だが、複数のレイヤーにまたがって動作する技術や仕組みも存在する。代表的な例は以下の通りだ。

  • ITU-T(International Telecommunication Union - Telecommunication Standardization Sector:国際電気通信連合 電気通信標準化部門)によるセキュリティアーキテクチャ「X.800」
    • 通信の各レイヤーで必要となるセキュリティ機能を規定しており、複数レイヤーにまたがって適用される。
  • 通信管理機能
    • 通信の確立、調整、監視、終了といったプロセスを管理する仕組み。主にセッション層(レイヤー5)を中心に、他のレイヤーにも関与する。
  • MPLS(Multi-Protocol Label Switching)
    • レイヤー2(データリンク層)とレイヤー3(ネットワーク層)にまたがって動作するルーティング技術で、「レイヤー2.5」とも呼ばれる。フレームやパケットを含むさまざまなトラフィックを高速に転送する。
  • ARP(Address Resolution Protocol:アドレス解決プロトコル)
    • レイヤー3のIPアドレスを、レイヤー2のMACアドレスにマッピングするためのプロトコル。IPネットワーク上での通信に不可欠。
  • DNS(Domain Name System)
    • 一般にはアプリケーション層(レイヤー7)に分類されるが、IPアドレスの解決には下位レイヤーの通信機能も利用する。

OSI参照モデルで表すデータの流れ

 OSI参照モデルは、送信元のデバイスから宛先のデバイスへとデータがどのように流れるかを、各レイヤーの役割に沿って規定する。ここでは、メールクライアント「Microsoft Outlook」を使ってメールを送信するケースを例に、OSI参照モデルに基づいたデータの流れを見ていこう。

送信元

  • レイヤー7(アプリケーション層)
    • Microsoft Outlookのようなメールクライアントが、転送プロトコル「SMTP」(Simple Mail Transfer Protocol)を用いてメッセージを送信する。
  • レイヤー6(プレゼンテーション層)
    • メッセージは暗号化および圧縮され、アプリケーションが処理できる形式に変換される。
  • レイヤー5(セッション層)
    • 送信側と受信側のメールサーバ間でセッションが確立され、メールの送信が完了するまでこの接続が維持される。
  • レイヤー4(トランスポート層)
    • メッセージは「セグメント」と呼ばれる単位に分割される。データの完全性を保つための制御やエラー検出もここで実行される。
  • レイヤー3(ネットワーク層)
    • セグメントに宛先のIPアドレスが付加され、パケットとしてまとめられ、ネットワーク上のルーティング処理が実行される。
  • レイヤー2(データリンク層)
    • パケットに宛先のMACアドレスが付加され、LAN内で送受信できるようフレームに変換される。データ転送中に発生したエラーの検出も実行される。
  • レイヤー1(物理層)
  • フレームが0と1のビットに変換され、光ファイバーケーブルなどの物理媒体を通じて信号として送信される。

宛先

  • レイヤー1(物理層)
    • 光ファイバーケーブルなどの物理媒体を通じて受信した信号が、0と1のビットとして読み取られ、上位レイヤーに引き渡される。
  • レイヤー2(データリンク層)
    • ビット列が「フレーム」として再構成され、MACアドレスなどの情報を基に正しいデバイス宛てであることが確認される。その後、フレームから「パケット」が抽出される。
  • レイヤー3(ネットワーク層)
    • パケットの宛先IPアドレスを参照し、ネットワーク上での経路を確認。パケットから「セグメント」が復元される。
  • レイヤー4(トランスポート層)
    • セグメントが元の順序に整えられ、データの整合性が検証された上で、完全なデータとして復元される。
  • レイヤー5(セッション層)
    • メールの完全な受信が完了するまで、送信側と確立したセッションが維持される。
  • レイヤー6(プレゼンテーション層)
    • データは暗号化が解除され、必要に応じて解凍される。その上で、アプリケーションが処理できる形式に変換される。
  • レイヤー7(アプリケーション層)
    • Microsoft Outlookのようなメールクライアントがデータを受け取り、人間が読める形で表示する。メッセージは受信フォルダに保存され、PCやノートPC、スマートフォン、タブレットなどで閲覧できるようになる。

 次回は、OSI参照モデルの利点と欠点について解説する。

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