検索
特集/連載

Meta対GoogleのAIを巡る“終わらないインフラ投資競争”数百、数千億ドル規模の覇権争い

MetaとGoogleが、AI分野の覇権を巡る巨額のインフラ投資を相次いで表明した。両社のアプローチは明確に異なっており、一部にはリスクもあると専門家は指摘する。どのような競争が繰り広げられているのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena

関連キーワード

人工知能 | Google | データセンター | Facebook


 人工知能(AI)技術を支えるデータセンターの開発競争において、Meta Platforms(以下、Meta)とGoogleが激しい競争を繰り広げている。両社は大規模なインフラ増強に向けて、それぞれのアプローチに基づいた大規模な投資を計画している。

Metaが実現しようとしている「トップクラスのAIインフラ」

 MetaのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は、AI分野における主導的地位を確立するため、数千億ドルを投資する計画を発表した。その一環として、AIデータ「スーパークラスタ」群の第1弾が2026年に稼働を開始するという。スーパークラスタとは、最先端のAIアクセラレーター(AI関連の計算処理を高速化するために特別に設計されたハードウェア)を搭載した巨大なAIデータセンターのことだ。

 ザッカーバーグ氏はMetaが運営するSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「Threads」への投稿で、計画中のスーパークラスタ「Prometheus」が数ギガワット級の電力を消費する計算能力の提供拠点の一つになると述べた。別のスーパークラスタ「Hyperion」は、最大5ギガワットの電力供給を見込んでいる。

 ITコンサルティング企業CapgeminiでAIおよびデータ部門を率いるプラディープ・サンヤル氏は、「Metaは単にデータセンターを建設しているのではなく、交渉力を構築している」と分析する。サンヤル氏は、計算能力の優位性が最先端AIモデルの開発における新たな主戦場になっていると指摘する。そうした中で、Metaはギガワット規模の電力を消費するスーパークラスタを導入することによって、「ごく少数の企業しか到達できない領域のインフラ」を手に入れようとしているという。

 AI技術の進化を求める大手IT企業の意向を受け、大手クラウドベンダーやAI関連企業は、こうしたクラスタの建設競争を繰り広げている。

 MetaのAI技術研究用スーパーコンピュータ「AI Research SuperCluster」は2022年から稼働しており、1万6000基のNVIDIA製GPU(グラフィックス処理装置)「A100」を、大規模言語モデル(LLM)のトレーニングに利用している。Amazon Web Services(AWS)とAnthropicは2025年に共同でスーパークラスタ「Project Ranier」を発表し、AWSのチップ「Trainium2」を採用することを計画している。イーロン・マスク氏が率いるAIベンダーxAIのスーパーコンピュータ「Colossus」は、20万基のNVIDIA製チップを搭載し、300メガワットの電力を必要とする。

Googleの電力戦略

 AIコンピューティングの発展には膨大な電力が必要不可欠であり、大手IT企業は電力供給網の確保を競っている。

 Googleは、2027年までに250億ドルを投資し、米国の13州を管轄するデータセンターとAI技術用のインフラを整備すると発表した。

 大量の電力を消費するデータセンターに電力を供給するため、Googleはペンシルベニア州にある2カ所の水力発電所の改修に30億ドルを投じる計画だ。この投資は、資産運用会社Brookfield Asset Managementとの契約の一環であり、米国内で3000メガワットのカーボンフリー(二酸化炭素を排出しない)水力発電による電力を購入する。

 Googleの親会社であるAlphabetは2025年4月、データセンターとインフラに同年中に750億ドルを投じると発表した。同年6月には、電線の製造を手掛けるCTC Globalとの提携を発表し、新技術を用いて米国内の電力網の容量を拡大する計画も明らかにした。

 サンヤル氏は、MetaとGoogleのAI戦略は「対照的」だと指摘する。

 MetaがAI専用のスーパークラスタに賭けているのに対し、Googleはよりバランスの取れた戦略を進めているとサンヤル氏はみる。Googleは積極的なデータセンター拡張とクリーンエネルギーの長期調達を組み合わせており、「30億ドル規模の水力発電契約は電力容量だけではなく、供給の安定性も高めるものだ」と同氏は付け加える。

 「Metaは規模を最優先した増設を進める一方、Googleは計算能力、持続可能性、電力網との連携を重視している。両社とも業界の主導権を狙っているようだ」(サンヤル氏)

MetaのAI戦略がはらむリスク

 サンヤル氏は、Metaの戦略がAIインフラと人材の囲い込みにある可能性を指摘する。同社は既に、OpenAIやAppleといった競合他社からトップクラスの人材を引き抜いている。報道によれば、MetaはSafe Superintelligenceの買収に失敗した後、Safe Superintelligenceの元CEOであるダニエル・グロス氏を雇用した。

 「Metaは計算能力、資本、人員を武器に、AI分野における議論の中心に返り咲こうとしている」とサンヤル氏は分析する。しかし、この戦略には「重大な実行リスク」が伴うとも同氏は指摘する。「これほどの規模のインフラ拡張は容易ではない。優秀な人材を自社に組み入れることはさらに困難だ」

 インフラや人材の拡張戦略をMetaが成功させられるかどうかは未知数だが、その結果が重大な影響を及ぼすことは明らかだ。「もしMetaがこの戦略を成功させれば、AI業界の勢力図は塗り替えられるだろう。しかし失敗すれば、膨大な金額を使った人事として記憶されることになる」とサンヤル氏は語る。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

ページトップに戻る