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“後発”Oracleも「MCP」採用 Oracle Databaseはどう便利になる?「RAG」実現の鍵

Oracleは同社RDBMS製品「Oracle Database」において、AIエージェントとの外部接続用プロトコル「MCP」を利用できるようにした。ユーザー企業にとってどのような利点があるのか。

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 OracleはAI(人工知能)エージェントを外部のデータソースに接続するオープンソースのプロトコル「Model Context Protocol」(以下、MCP)の採用に取り組んでいる。MCPは、AI技術ベンダーAnthropicが2024年11月に発表したものだ。AIエージェントが外部のデータベースや大規模言語モデル(LLM)と接続し、学習能力を高められるようにする。ベンダーが自社製品にMCPを採用することで、ユーザー企業にもたらされるメリットを見てみよう。

MCPはなぜ企業でのAI活用に重要なのか

 クラウドベンダーのAmazon Web Services(AWS)やGoogleの他、データ分析技術を手掛けるDatabricks、クラウドデータウェアハウス(DWH)ベンダーSnowflakeなどがMCPを採用している。Oracleは2025年7月、同社のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)「Oracle Database」でMCPを利用できるようにした。

 「MCPは外部データを用いたAIエージェントのトレーニングを簡素化し、相互運用性を高めるので、Oracle Databaseユーザーにとって価値のある機能だ」と、調査会社Constellation Researchアナリストのホルガー・ミューラー氏は述べる。同氏によると、外部ソースから得た情報を用いてAIモデルの出力精度を高める手法「RAG」(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)を実現するために、MCPは重要な技術だ。

 AIエージェントはAI分野における大きなトレンドの一つだ。AIベンダーOpenAIが2022年11月にAIチャットbot「ChatGPT」を公開して以降、企業はAI技術の採用に取り組んできた。近年はAI技術がさらに進化し、自律的に判断して業務を自動化するAIエージェントが登場している。

 AIチャットbotが質問されたときにのみ回答を生成するのに対し、AIエージェントは文脈認識と推論能力を持ち、指示を待たずに行動できる。データから洞察を得るための検索や、定型的なプロセスの自動化といったタスクを自律的に実行可能だ。

 人間の関与が少なくなる分、間違った判断によって自社や取引先に不利益を与えないよう、AIエージェントに安全かつ責任ある行動をトレーニングさせることが重要だ。このトレーニングを標準化するためにMCPは開発された。同様の目的を達成するために、MCPに類似する技術として、Googleは2025年4月にプロトコル「Agent2Agent」(A2A)を発表した。

専門家が指摘するMCPの重要性

 「こうしたプロトコルがなければ、LLMを自社データと組み合わせたアプリケーション開発では、システム間の通信が複雑になり、時間がかかる」と、コンサルティング会社McKnight Consulting Groupのプレジデント、ウィリアム・マクナイト氏は指摘する。同氏によれば、MCPはLLMが外部データベースの構造を自ら解釈して直接やりとりできるようにすることで、プロセス全体をより効率的かつ自律的にし、拡張性を高める。

 Oracle Databaseのユーザー企業は、コマンドラインインタフェース(CLI)を通じてMCPによる接続を有効化できる。CLIはMCPサーバとして機能し、Oracle DatabaseとMCP準拠ツール間を安全に接続することで、自社データを用いたAIエージェントのトレーニングを可能にする。

 企業が自社データを外部システムに共有することには、情報漏えいの懸念が伴う。それに対処するためにOracleはユーザー企業に対し、LLMにデータへのアクセスを許可する際、データを複製したり、専用のデータサブセットを使用したりすることを推奨している。LLMへのクエリ(問い合わせ)を定期的に監査し、異常や不正アクセスを検出することも推奨している。

 「OracleがMCPを採用した動機は、AIエージェントを開発する企業に提供できるオープンスタンダードの潜在的な価値にあった」と、同社プロダクトマネジャーのジェフ・スミス氏は語る。「ITベンダーはMCPを極めて迅速に採用しており、その将来性は明白だ。Oracle Databaseのユーザー企業にも、その価値を提供したい」と同氏は説明する。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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