銀行の勘定系システムも“AIドリブン”に ソニー銀行と富士通が開発に利用:開発期間の2割削減を目指す
ソニー銀行と富士通は、勘定系システムの全機能開発に生成AIを適用し、開発期間の20%短縮を目指す。複雑なシステム開発を効率化し、顧客ニーズへ迅速に応える新サービスの提供を加速させる狙いだ。
金融業界では、多様化する顧客ニーズに応えるため、新しいサービスをいかに迅速に市場へ投入できるかが競争力の鍵を握っている。しかし、その根幹を支える勘定系システムの開発は複雑で、多大な時間がかかることが積年の課題となっている。
この課題を解決するため、ソニー銀行と富士通は共同の取り組みを開始した。ソニー銀行は、富士通の勘定系システム「Fujitsu Core Banking xBank」を採用したバンキングシステムが、2025年5月から稼働している。このシステムを対象として、両社は同年9月にシステムの機能開発プロセスにAI(人工知能)技術を導入した。具体的には、これまで人手で実施してきた設計書の作成、プログラムのソースコードの生成、システムの動作を確認するテストコードの作成といった一連の工程を、生成AIによって自動化する。
AIモデルの精度を高める富士通の独自技術
ソニー銀行と富士通は2026年4月までに、ソニー銀行の全勘定系システムの機能開発にこの仕組みを適用する計画で、最終的には開発期間を現状から20%短縮することを目指している。この取り組みが成功すれば、市場の変化や新たな顧客ニーズに対して、よりスピーディーに新商品やサービスを提供できるようになる。
この取り組みを支える中核的な要素は主に2つある。1つ目は、富士通が独自に開発したAI技術「ナレッジグラフ拡張RAG」だ。これは、銀行が保有する過去の設計書や仕様書といった膨大な社内データを、AIモデルが理解しやすいように意味的関連性で結び付け、知識の地図(ナレッジグラフ)として整理する技術だ。これによって、AIモデルは単語の検索だけではなく、文脈や背景を深く理解した上で、より人の意図に沿った精度の高い設計書やソースコードを自動生成できるようになる。
2つ目の要素が、クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)で全ての開発プロセスを完結させる点だ。システムの安全性と拡張性を確保しながら、開発効率を向上させることが可能になる。ソニー銀行の執行役員である福嶋達也は、「クラウドネイティブな開発環境とAI技術の融合によって、金融サービスの未来を切り開く新たな一歩を踏み出せる」と、その相乗効果に期待を寄せる。
今後ソニー銀行と富士通は、開発とテストだけではなく、システムの企画や要件定義、リリース後の運用保守といった、システム開発の全工程に生成AIの適用を拡大する計画だ。最終的には、生成AIが中心となって自律的、継続的に開発を進める「AIドリブンな開発エコシステム」を確立し、日本の金融業界におけるAI技術活用の先進モデルとなることを目指している。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。