関西電力が4万人規模の「Zoom」導入 手作業のID管理を年300時間も削減:「40分制限」よりも厄介な問題?
関西電力はグループ従業員約4万人に「Zoom Workplace」有償版を本格導入した。有償版に切り替えた目的は会議の時間制限の解消だけではなく、IT管理者を悩ませていた「手作業地獄」を解消することにもあったという。
関西電力は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染対策で従業員の働き方が大きく変化する中、ビデオ会議の需要が急増した。緊急で導入したビデオ会議ツール「Zoom Meetings」(当時は「Zoom」)の無償版には「40分の会議時間制限」があり、社外関係者との会議で支障になる場面があった。これ以外にも、オンライン研修で活用したいといった従業員からの要望が上がり、機能面での限界が浮き彫りになっていた。従来の社内ビデオ会議システムには同時接続数に上限があり、全社的なテレワークの需要に応え切れないという課題も抱えていた。
これらの課題を解決するため、関西電力は2023年に約4万人規模でのコミュニケーションツールの刷新を決定し、Zoom Meetingsを中核とするコラボレーションツール「Zoom Workplace」への移行を選択した。
大規模導入の思いがけない落とし穴
ツールの選定に当たっては複数のツールを比較検討したという。最終的にZoom Workplaceを選んだ理由について、関西電力 IT戦略室情報通信技術グループ マネジャーの小野田 哲也氏は「ネットワーク通信量を細かく制御できる点や、映像、画像を共有しやすい点を評価した」と語る。従業員がすでにZoom Meetingsの操作に慣れていたことも、円滑な導入を後押しする決め手となった。
Zoom Workplaceの導入によって、Zoom Meetingsの会議時間制約がなくなり、従業員アンケートでは92%が「満足している」と回答するなど、現場でのコミュニケーションツールの利便性は大きく向上した。録画機能を活用して社内研修をオンデマンドで共有したり、顧客との会議に出張先から参加したりと、時間や場所に縛られない働き方が社内に浸透しつつある。
今回の導入におけるもう一つの大きな成果は、管理業務の大幅な効率化だ。関西電力は認証セキュリティを強化するため、Zoom Workplace専用のIDとパスワードを使わないシングルサインオンの仕組みを構築した。グループ会社との分社化に伴い、それぞれで異なるユーザー認証基盤が存在したことから、Zoom Workplaceのテナント(契約、管理単位)も2つに分離して運用する必要があった。
当初、この2つのテナントをまたぐ人事異動に伴うライセンスの付け替えは手作業で実施していたが、2025年3月に人事データと連携する新たなID管理の仕組みを構築。これによってライセンス付与を自動化し、IT管理者の作業時間を年間で300時間近く削減することに成功した。
関西電力は、AI(人工知能)機能による会議要約やホワイトボード機能の活用を促進する他、クラウド型の電話サービス「Zoom Phone」の導入も進めており、さらなるコミュニケーションの質の向上を目指す。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。