イトーキが物流倉庫向け予知保全システムの開発でオラクルと組んだ理由:安定稼働と保守効率を両立
イトーキは、日本オラクルのサービスを基盤に、物流倉庫向け予知保全システムを開発したと発表した。AI技術により設備の異常予兆を検知し、稼働率向上と保守最適化を図る。
物流の現場では、人手不足を背景に自動化、省人化が急速に進んでいる。一方、突発的に設備が停止すれば、生産や計画に生じる影響は甚大だ。事務用品やオフィス家具を扱うイトーキはこの課題を解決するために、物流倉庫システムの故障の兆候を事前に把握する予知保全システムを開発。2025年11月5日に発表した。
予知保全システムの構成は
予知保全システム「スマートメンテナンス」の開発に当たってイトーキが活用したのが、Oracleの以下2つのツールだ。
- 「Oracle Autonomous AI Database」
- 人工知能(AI)技術によって管理作業を自動化するデータベース
- 「OCI Data Science」
- オープンソースの機械学習ライブラリを活用してLLM(大規模言語モデル)を構築、トレーニングできる統合環境
スマートメンテナンスでは、イトーキの物流倉庫システム「システマストリーマー SAS-R」に設置されたセンサーや制御装置から収集した稼働データを、Oracle Autonomous AI Databaseに集約し、拠点や季節ごとの差を調整しながら加工する。一方、AIモデルの開発にはOCI Data Scienceを使用した。同モデルを使用することで、システマストリーマー SAS-Rを稼働させる現場で発生し得る多様な故障や異常パターンの予兆を早期に検出する仕組みを構築することができる。
Oracle Autonomous AI Databaseに集約されるデータには、シャトル台車(ドーリー)のトルク値(物体を回転させる力の大きさを示す物理量)や、昇降装置(リザーバー)のセンサー情報などが含まれる。これらを継続的に監視、可視化することで、故障の兆候を早期に把握できるようになっている。スマートメンテナンスのユーザーインターフェース(UI)や通知機能は直感的に操作できるデザインとなっており、現場の担当者が即時に異常に対応できるよう配慮されているという。
スマートメンテナンスは、物流倉庫システムの異常を遠隔で把握、復旧できるよう支援する「リモートメンテナンス」と統合し、「ITOKIアドバンスドメンテナンス」として2026年1月から展開される予定だ。従来の時間基準による保守では対応できなかった突発的なトラブルへの対応力を高める他、部品交換時期の最適化や入庫制限といった高度な保全機能も備える。
イトーキの社長、湊 宏司氏は、物流やインフラの現場で顕在化している人手不足や設備の老朽化といった課題に言及する一方、「止めない運用」が物流やインフラ分野で求められている実態について述べている。同社は、「日本オラクルとの協業を通じて先端技術と現場知を融合し、物流現場の生産性と安定稼働の両立をリードしていく」とコメントしている。
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