AIコーディングで速度“5倍” 中外製薬が「Gemini Code Assist」を選んだ理由:アジャイルな開発文化の定着
中外製薬は、GoogleのAIコーディングツール「Gemini Code Assist」を導入し、開発速度を大幅に高めた。開発の属人化や心理的ハードルに悩んでいた同社はなぜGemini Code Assistを選んだのか。
製薬大手の中外製薬は、GoogleのAI(人工知能)技術を活用したコーディング支援エージェント「Gemini Code Assist」を導入し、システム開発プロセスに変革をもたらしている。
導入以前、製薬大手の開発現場では深刻な課題に直面していた。特に臨床開発部門では、システムを開発できる人材が限られており、新しいツールの開発に対する「心理的なハードル」があった。「気軽に『作ってみよう』とは言えない状況だった」と、臨床開発を推進する同社の高野達人氏(バイオメトリクス部臨床システム・インフォマティクスグループ)は語る。尾形遥介氏(デジタルトランスフォーメーションユニットデジタルソリューション部アジャイル開発グループ)も、一度決めた仕様の変更が難しく、迅速な改善サイクルを回すことに困難を感じていたと振り返る。
開発文化を変えた「3つの決め手」
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AIコーディングツールの活用
こうした課題を解決するために中外製薬が導入したのがGemini Code Assistだ。選定の決め手は3点あった。
第一に、AIモデルが一度に処理できる情報量(コンテキストウィンドウ)の広さだ。Gemini Code Assistは、中外製薬の開発者の意図を正確にくみ取るのに十分なコンテキストウィンドウを提供しており、他のAIコーディングアシスタントと比較してエラーが少ない高精度なソースコード生成が可能になったという。
第二に、料金体系だ。Gemini Code Assistは、AIモデルが生成した文量や通信回数などに応じて料金が変動する従量課金制ではなく、サブスクリプションモデルを採用している。高野氏は「定額のため、開発時間や予算超過を気にせず、安心して開発に集中できる」点を魅力に感じている。
第三に、中外製薬がすでにGoogleのクラウドサービス群「Google Cloud」をしており、それらとGemini Code Assistの親和性があったことだ。データサイエンスを担当する、中外製薬の水谷圭佑氏(デジタルトランスフォーメーションユニットデジタルソリューション部データサイエンスグループ)は、データウェアハウス(DWH)サービス「BigQuery」で実行するクエリを容易に作成できる点を評価している。
これらの特徴が、中外製薬のシステム開発プロセスを変革した。高野氏は、「開発に着手するまでのプロセスが劇的に変化した」と話している。具体的には、数週間かかっていたプロトタイプの作成が数十分で可能になったという。事業部門からの相談に対し、その場ですぐに試作品(モックアップ)を作ってイメージを擦り合わせることができるようになり、「まず作って、見てもらう」という迅速な試行錯誤を繰り返す開発手法が実現した。
効果について、尾形氏は「体感的な開発速度は5倍になった」と語る。1時間の作業時間で5時間分の開発成果を得られる感覚だという。
中外製薬はGemini Code Assistを部門横断で活用している。臨床開発部門では規制当局向け文書作成の効率化、アジャイル開発部門では全社向けAIアプリケーションの開発、データサイエンス部門では論文の再現実装やデータ分析に不可欠なツールになっているという。「単なるコーディング支援にとどまらず、データサイエンティストの思考を拡張してくれるパートナーだ」と水谷氏は述べる。
今後、中外製薬はAIエージェントを使いこなす人材の育成やレビュー体制の整備を進めつつ、業務ごとに特化したAIエージェントの開発を構想している。AIエージェントを単なるツールではなく、開発者の能力を拡張する「パートナー」として位置付ける同社の取り組みは、あらゆる業界における企業DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に示唆を与えるものだ。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。