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そのクラウド移行は正解か? ストレージ効率を“劇的”に変える「階層化戦略」ストレージの無駄遣いを防ぐ5つの戦略【前編】

ストレージにかかる費用を削減しつつ性能も維持するのは至難の業だ。安易なクラウド移行は予期しない費用増加を招く恐れがあり、オンプレミス回帰も進んでいる。システムが複雑化する中、データをどこに置くべきか。

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SSD | ハードディスク | データ


 増大し続けるデータを扱う中、ストレージシステムを効率的に稼働させることは重要な課題だが、その実現は容易ではない。今日、企業のデータはオンプレミスストレージとクラウドサービスの両方に存在しており、データの発生場所近くに配置された「エッジデバイス」でデータを管理するケースもある。ストレージの種類も、HDDやSSD、ブロックストレージ、オブジェクトストレージ、テープストレージなどさまざまだ。

 ストレージの種類が混在し、データ量が増え続ける状況は、効率的なストレージシステムの維持を困難にする。同時に、容量効率と読み書き速度のバランス調整も求められるが、この2つは総じて相反する関係にある。データ圧縮や重複排除といった効率を高める技術は、ストレージの種類やデータ量によっては読み書き速度に悪影響を及ぼす可能性がある。

 企業が複雑化するインフラで、ストレージの性能とセキュリティを考慮しながら、ストレージを効率的に使うためのヒントを紹介する。

1.現状の棚卸しと戦略の立案

 まず、以下の項目について棚卸しを実施する。

  • データの保存場所
    • クラウドサービスか、オンプレミスストレージか。
  • 保存方法
    • オブジェクトストレージか、ブロックストレージか、ファイルストレージか。
  • データの種類
    • 構造化データか、半構造化データか、非構造化データか。
  • データ量

 次に、企業の目標に基づいて現在のストレージの容量使用を評価する。この評価に基づいて、企業は現在のシステム構成で容量使用率を改善し、その効率を維持するための計画を策定できる。この計画は、企業が有するデータとストレージの要件に合わせて調整する必要があり、以下の点を考慮に入れるとよい。

予算と性能のバランス

 データの圧縮は運用費の削減につながる可能性があるが、ストレージの性能を低下させることもある。戦略を立案する際は、ビジネス要件を慎重に検討しなければならない。

クラウドサービスの利点と欠点

 クラウドサービスは拡張性に優れた保存先になるが、料金、性能、セキュリティの懸念が伴う。クラウドベンダーのストレージサービスを、料金、性能、セキュリティ、他システムとの連携要件といった観点から評価することが重要だ。バックアップやアーカイブなど、特定の種類のデータ保存にのみクラウドサービスを利用する企業もあれば、ほぼ全てのストレージをクラウドサービスで構築する企業もある。クラウドサービスをどの程度利用するかは、ビジネス要件と予算の制約に基づいて決定しよう。ストレージやCPU、メモリといったリソースの過剰または過小なプロビジョニング(割り当て)を避けるため、リソースの適正化を図る。

ハイブリッドクラウド

 クラウドサービスとオンプレミスの両方を利用する「ハイブリッドクラウド」では、ストレージリソースをより効率的に管理するための戦略を慎重に計画し、実行する必要がある。これによってセキュリティ、コンプライアンス(法令順守)、拡張性、パフォーマンスのニーズに適合しながら、ストレージを効率的に利用するための自由な制御が可能になる。ただし、ハイブリッドクラウドは複雑で、導入と保守が難しい場合がある点には注意しなければならない。

動的なストレージ階層化

 データライフサイクル管理(DLM:データが生成されてから破棄されるまでの一連のライフサイクル)の方針に沿って、データを最適なストレージ階層や場所に自動的に移動させる「動的な階層化」を実行する。クラウドサービス間で、あるいはクラウドサービスとオンプレミスストレージ間でデータを転送する際は、常にエグレス料金(データ転送料金)を考慮に入れる。

オブジェクトストレージ

 非構造化データには、可能な限りオブジェクトストレージを利用する。オブジェクトストレージは豊富なメタデータを扱うことができ、拡張が容易で、一般的に他の種類のストレージよりも導入費、運用費を抑えることができる。

抽象化

 社内外の分散データを仮想的に集約、管理する「データファブリック」、物理的な場所を意識させずにデータを一元的に扱う「データ仮想化」、ハードウェアからストレージ管理機能を分離する「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)など、データソースを抽象化してデータを一元管理する手法を検討する。データソースを抽象化することで、エンドユーザーはデータを有効活用できるようになると同時に、データ管理の効率が向上し、IT部門に対するエンドユーザーからの問い合わせを減らすことにもつながる。

移行計画

 インフラ変更の展開、データ移行、ハードウェアの廃棄、データ削除の手順を策定し、実行する。

2.オンプレミスインフラの最新化

 オンプレミスストレージを利用している場合、ストレージを効率的に活用するために、社内インフラを慎重に設計、配置する必要がある。ストレージとデータネットワークは、ワークロードとストレージを効率的に支えられるものでなければならない。これはネットワーク機器だけではなく、ストレージデバイスとの接続を容易にするソフトウェアやプロトコルも対象だ。

 階層化戦略には、オンプレミスストレージを組み込むことが重要だ。アクセス頻度、性能要件、データの重要性といった要素を考慮し、ディスクの種類に基づいてデータを階層化する戦略もある。以下のようにデータを分類し、それぞれのデータを適切なストレージ階層二保存する戦略が考えられる。

  • ホットデータ
    • ミッションクリティカルなワークロードを支えるデータ。
    • ハイエンドSSDやオールフラッシュアレイに保存することを検討する。データ転送にはNVMe(Non-Volatile Memory Express)やNVMe-oF(NVMe over Fabrics)といった、高速なデータ通信規格を利用することが一般的だ。
  • ウォームデータ
    • ホットデータほどのアクセス頻度や転送速度を必要としない、重要度の低いワークロードを支えるデータ。
    • 大容量HDDやミッドレンジSSDに保存することが考えられる。
  • コールドデータ
    • バックアップやアーカイブデータ。
    • ミッドレンジHDDやテープストレージに保存する。

 このアプローチはあくまで指針だ。階層型ストレージは、企業ごとの要件に基づいて設計しなければならない。例えばホットデータとウォームデータの中間に、SSDとHDDのハイブリッドアレイ、あるいは高性能キャッシュを多用するHDDアレイを使用する階層を追加することもできる。ハイブリッドアレイ製品には、同一ストレージシステム内でデータを自動的に階層化する機能を備えているものがある。

 クラウドサービスも、ストレージの使用効率を最大化する上で十分な自由度を確保できるならば、特定の種類のデータにとっては重要な役割を果たす。ハイブリッドクラウドを導入済み、あるいは導入を計画している企業であれば、ディスク使用率と階層化戦略は、自社のシステム構成に適合し、DLMの取り組みと一貫性が取れている必要がある。ホットデータとウォームデータはオンプレミスストレージに保持し、バックアップやアーカイブデータはクラウドサービスに保存するといった構成が考えられる。


 次回は、3〜5つ目のヒントを紹介する。

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