生成AIのルール整備が進む一方で活用は遅れがち? 日本企業のAI利用状況:各国の職場の生成AIの利用状況を比較
Wrikeが日本と米国、英国、ドイツ、フランスの職場におけるAI利用状況の調査結果を発表した。日本の組織のAI利用は、他国の状況と比較してどのような特徴が見られるのか。
プロジェクト管理ツールを手掛けるWrikeは、職場での生成AIの導入状況に関する調査結果を発表した。調査は日本、米国、英国、ドイツ、フランスの5カ国を対象に2025年9月に実施され、各国から200人ずつのフルタイム従業員が回答した。
「職場で日常的にAIツールを利用する」と回答したのはドイツが88%と最も多かった。英国(86%)、米国(82%)、フランス(78%)、日本(73%)がそれに続き、日本の生成AI利用率が、5カ国中最も低い結果となった。
「ビジョン欠如」が障壁? 日本のAI活用の特徴
職場で通常利用する生成AIツールの数を問う設問では、生成AIを利用中の日本の従業員のうち、70%が週に「1〜2種類」と回答した。一方で週に5種類以上のツールを使いこなす「パワーユーザー」は米国が13%だったのに対し日本は3%と、5カ国中最低だった(図1)。
「あなたの組織は、AIツールで成功するために従業員に対してどのような支援をしたか」を問う設問では、日本の組織は「AI利用に関する公式方針の共有」が45%と5カ国中トップだった。しかし「リーダーシップによる明確なAIビジョンの伝達」は17%と、米国(35%)や英国(36%)の半分以下にとどまり、日本の組織では生成AI利用のルール作りは進んでいるものの、生成AI導入を主導する組織のリーダー層のビジョンが欠如している傾向が示された。また既存ツールと生成AIの連携を進めた日本の組織は17%と、他国の回答結果より低い傾向が見られた(図2)。
「『私の組織のチームは、同レベルのアクセス、研修、サポートを受けて、一貫性のある方法でAIツールを使用している』という記述にどの程度同意するか」という設問に対し、「同意する」と答えたのはドイツが90%で米国(89%)とフランス(86%)、英国(85%)が続き、日本は76%と最下位だった。
この設問に「同意しない」とした回答者を対象に、「AIツール利用に一貫性がない、または連携が取られていない理由」について聞いたところ、「従業員がAIツールに乗り気ではない」(67%)「リーダーシップの指導や優先順位付けの欠如」という回答が他国より高い傾向にあった。一方で、「チームが中央戦略なしに独立してAIを導入している」という回答は他国より少なかった(図3)。
「シャドーAI」の利用率が低く、ガバナンス重視の日本
「この1カ月、会社で公式に導入または承認されていない生成AIツール(シャドーAI)を職場で使用したか」を問う設問で、「はい」と回答したのは米国が54%と最も高く、ドイツ(44%)と英国(42%)、フランス(42%)が続いた。日本は27%と最も低い結果だった。
日本は利用する生成AIの数や統治の方法から、個人が自由にツールを試すのではなく、組織が特定のツールを統一的に導入する「トップダウン型」の導入モデルを採用している傾向が見られる。こうした在り方はシャドーAIを減らしガバナンスを強化できる一方で、さまざまな生成AIツールを試しづらい状況を生じさせているといえる。
これらの結果から、Wrikeは米国では従業員が所属部署や特定業務の効率化のためにさまざまな生成AIツールを試す「試行錯誤型」の傾向が強い一方で、日本では組織の方針に従う「ガバナンス・品質重視型」の考えが強い傾向にあると結論付けている。
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