ワークマンが見つけた、少数精鋭の組織で成果を出す生成AIの使い方:意思決定のスピードも向上
ワークマンは、Google Cloudの生成AIツールを導入し、少人数でも効率的に高品質なビジュアルコンテンツを制作できる体制を確立した。導入の背景や活用方法を紹介する。
eコマース(EC:電子商取引)サイトにおいて、顧客の購買意欲を左右する要素の1つが、商品の魅力を伝えるビジュアルコンテンツだ。国内に1000店舗以上を展開し、約2000品目の商品を取り扱う、作業服・作業用品販売企業のワークマンの従業員数は500人以下だ。少ない従業員数で多品目を扱う同社は、ビジュアルコンテンツの制作を変革するに当たってGoogle Cloudの生成AIツールを導入した。導入の決め手の1つは、同社の経営思想との整合性だ。
ワークマンの経営思想とどう合っていた?
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他社では実際、どの程度生成AIを使っているのか
ワークマンの営業企画部Eコマースグループの担当者によると、同社は「飛び抜けた天才に頼るのではなく、標準的な能力を持つ社員が仕組みで成果を出す『100 年続く凡人経営』」を掲げている。そこで、導入する生成AIツールは専門家でなくとも直感的に扱えるユーザーインタフェース(UI)を持つことが必須条件だったという。
そこでワークマンが導入したのが、以下のツールだ。
- 「Gemini 2.5 Flash Image」(Nano Banana)
- 画像生成AIツール。プロンプトに従って、新規に画像を生成するだけでなく、既存の画像を編集、合成できる。
- 「Veo」
- 動画生成AIツール
- 「Imagen」
- 画像生成AIツール
同ツールの導入について担当者は、「システムの信頼性や将来性、コストの柔軟性においても、私たちのニーズに合致していた」と述べる。
ワークマンの担当者によると、例えば特定の機能を持つジャケットを紹介する画像を作成する場合、通常であれば最初に画像を撮影する場所を確定する。次に、カメラマンやモデルなど5〜10人のクルーをそこに派遣して、半日以上かけて撮影することが珍しくないという。一方、Imagenを使えば、1人のユーザーが5〜10分で画像を生成することができる。従来であれば費用や工数の面から撮影を断念していたカットの画像を制作できるようになったことも効果の1つだ。
視覚的なイメージを使うことで、社内コミュニケーションや意思決定も迅速化した。ワークマンの担当者によると、例えば展示会ブースや販促物のレイアウトを検討する場合、従来は言葉や参考画像を基に従業員間でイメージのすり合わせを進めていた。このやり方では、各人の理解にずれが生じていたという。しかし、コミュニケーションにImagenを使うようになったことで、従業員間の認識理解と合意形成が迅速化した。
ワークマンはさらに、Google Cloudの仮想試着技術「Virtual Try-on API」(VTO)の実験的な導入も進めている。同社担当者によると、VTOは衣服のしわや生地の質感、光の反射などを現物に近い状態に再現し、従来の技術では難しかった試着体験を可能にするという。
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