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社内申請システムの8割が「期待外れ」 失敗しないリプレースの“絶対条件”業務効率化のつもりが「隠れコスト」に

社内申請システム導入企業の8割超が、期待した効果を得られていない実態が明らかになった。現場を疲弊させる「見えない運用負荷」の正体と、企業が次に求めるべきシステムの条件に迫る。

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業務改善 | 業務効率


 業務効率化やペーパーレス化の足掛かりとして、企業は社内申請・稟議(りんぎ)システムの導入を進めている。だが、現場では思いがけない停滞が起きている。クラウド型ワークフローシステム「グルージェントフロー」を提供するサイオステクノロジーが2025年11月に発表した調査結果によると、システムを導入済みの企業の約4割が、単に「紙の稟議書を電子化し、申請・承認をしている」だけの利用にとどまっている。

 特筆すべきは、導入企業の8割以上が「導入時に期待した効果と現状にギャップがある」と回答している点だ。多くの企業が承認スピードの向上やペーパーレス化を期待して導入に踏み切るものの、運用開始後に想定外の課題に直面し、効果を十分に実感できていないことが読み取れる。

 なぜ、多くの企業がシステム選定に失敗し、デジタル化を業務改革につなげられていないのか。その背景には、システムが抱える構造的な問題があるという。現場が悲鳴を上げる「隠れコスト」の正体と、次に選ばれるシステムの条件を深掘りする。

組織変更に追い付けないシステムが「隠れコスト」に

 本調査は2025年9月、社内申請・稟議システムを1年以上運用している従業員数100人以上の企業の担当者112人を対象に実施された。その結果浮かび上がってきたのは、多くの企業が直面している最大の壁は「変化への対応力」、すなわち頻繁な組織改編や複雑な人事異動に対し、システム設定を即座に追従させる「柔軟性」が欠けている点だ。調査では、運用上の課題として「組織変更や人事異動時の設定変更負荷」を挙げた企業が40.2%で最多となった。次いで「グループウェアと連携しておらず、業務効率化が図れていない」(35.7%)が続く。

 日本企業では頻繁な組織改編や人事異動が発生する。そのたびに複雑な承認ルートの設定変更を手作業で実施しなければならない、融通が利かないシステムは、情報システム部門や管理部門にとって、看過できない業務上の負担になってのしかかる。日常的に利用するチャットツールや人事システムと連携できない独立したシステムは、入力の二度手間を生み、かえって従業員の生産性を下げる要因になり得る。

 こうした状況を受け、回答者の8割以上が、現在のシステムのリプレース(入れ替え)を検討していると答えた。

 次のシステム選定で重視する点としては「業務フローへの柔軟な対応力」を挙げた人が最多で、その割合は55.9%に達した。これは「導入コストの安さ」(33.3%)を大きく上回る。企業は初期費用の安さよりも、変化に即応できる拡張性を優先している。

 今後の社内申請・稟議システムには、経費精算や備品購入などの幅広い社内手続きを一元化する役割が求められる。単なる「電子はんこ」としてのツールから脱却し、組織の変化に応じて進化できる「業務改革の中核システム」への転換が進むはずだ。変化の激しい時代において、組織改編や人事異動といった変化にすぐ順応できるシステムの「柔軟性」こそが、失敗しないリプレースの条件だと言える。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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