検索
特集/連載

“SSD全盛期”なのに「テープ」がしぶとく生き残る理由テープの強みを振り返る【前編】

1960年代から1980年代にかけてストレージの主役だった磁気テープは、HDDやSSDに代替された向きもあるが、完全に姿を消したわけではない。むしろ独自の特性を生かし、さまざまな用途で使われている。そのようなテープの強みを解説する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

関連キーワード

データ | ストレージ


 磁気テープは1960年代から1980年代にかけてストレージの主役だったが、その後はHDDやSSDに取って代わられ、主役の座を譲った。しかしテープには他では代替しづらい独自の特性があり、完全に姿を消してはいない。テープの特性を振り返ってみよう。

なぜ「テープ」は消えないのか

 テープは、企業がバックアップデータを社内に持つ「オンサイトバックアップ」やアーカイブの用途、さらにはメディア業界などでは大量のデータを管理する用途に使われ続けてきた。近年はマルウェアからデータを保護する必要性に加え、災害復旧や事業継続への関心が高まったことで、あらためてテープが注目されている。

 テープの容量は、テープカートリッジを買い足せば“理論上は無制限”だが、予算やそれらを保管するための物理的なスペースが制約になる。

 ただしテープカートリッジの容量は着実に向上している。2000年に登場したテープ規格の一つ「LTO」(リニアテープオープン)第1世代の保存容量は、非圧縮時で100GB、圧縮時で200GBだったが、第9世代となる最新規格「LTO-9」の保存容量は非圧縮時で18TB、圧縮時で45TBに拡大した。2025年11月時点、LTOを策定する業界団体「LTO Program Technology Provider Companies」(TPCs)のロードマップでは、LTO-14の保存容量は非圧縮時で365TB、圧縮時で913TBまで拡大する見通しだ。

 こうした進歩によって、大規模なデータベースのバックアップ、アーカイブを単一のカートリッジで賄うことが可能になりつつある。さらに現行のテープはデータ転送速度も向上しており、LTO-9の場合、圧縮時で最大1000MBpsに進化した。

 一方、テープには技術的な欠点もある。テープはデータを先頭から順に読み取っていく「リニアメディア」であるため、他の記憶媒体と比べるとランダム入出力の効率は劣る上、物理的な駆動機構を持つため摩耗が生じやすい。大規模なテープライブラリの場合、保守も必要だ。

 テープの取り扱いにも配慮が必要になる。理論上、テープの寿命は最大30年とされているが、カートリッジは適切な温度と湿度のもとで保管しなければならない。企業がデータを安全に保管するためには、保管場所に施錠することも求められる。

コスト面での優位性

 特にテープライブラリは、導入コストが高額になることがある。しかしテープカートリッジ自体は安価であり、運用コストも低い。テープカートリッジを使用していない間は電力を消費しないため、エネルギーコストも抑えられる。

 調査会社GigaOmのフィールドCTO(最高技術責任者)であるダレル・ケント氏は「大規模なストレージだと、テープは1TB当たりのコストがHDDなどの“回転ディスク”より1桁低くなる」と述べる。「管理にかかる間接的なコスト(オーバーヘッド)を含めると、アクセスの頻度が高いクラウドストレージと比べて2桁低くなる場合もある」(同氏)

 ケント氏は「テープはおそらく最も効率的な記憶媒体だ」と主張する。「テープはデータを先頭から順番に読み取ることができ、拡張性が高く、安定性に優れている。他の記憶媒体はPB規模になると消費電力、コスト、長期的な耐久性などで苦労することがあるが、テープは容量が増えるほど性能面の優位性が高まる」とケント氏は語る。

 ただし、テープはリムーバブルメディア(ドライブから取り外しが容易な記憶媒体)であるため、1TB当たりのコストを算出するのが難しい。テープを再利用するのか、恒久的にオフサイトバックアップのために使用するのかによって評価は異なる。


 テープの価値は安さだけではない。次回はその他の強みを解説する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る