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「上司が話を聞いてくれない」――心が病んでいく「静かな崩壊」の原因と対処法5人に1人が陥る「静かな崩壊」の実態【後編】

仕事への意欲が次第に失われ、生産性が低下し、欠勤や退職を招く「静かな崩壊」が広がりつつある。その原因の一つは、従業員が抱える不安だ。どのような対処法があるのかを紹介する。

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 仕事への意欲が徐々に薄れ、生産性が低下し、欠勤が増えたり退職に至ったりする──。こうした現象は「静かな崩壊」(Quiet Cracking)と呼ばれる。従業員研修プログラムを提供するTalentLMSの報告によると、静かな崩壊の要因の一つは「不安」だ。業務内容が不透明だったり、上司との関係性が悪かったりして不安が生じると、静かな崩壊を招く恐れがある。

 静かな崩壊を防ぐ対処法は何か。具体的な方法は以下の通りだ。

静かな崩壊の原因と対処法

上司との断絶を解消する

 ほとんどの従業員にとって、直属の上司は真っ先に相談できる相手だ。しかし上司との間に断絶があると、問題が起きたときに従業員は孤立する。TalentLMSが2025年3月、米国の従業員1000人を対象として実施した調査によると、54%が「静かな崩壊」を経験したと回答。そのうち47%が「上司が話を聞いてくれない」と回答した。

 「組織にとって最大の見えないリスクの一つは、管理職の研修不足だ」と、人材管理システムのベンダーisolvedのCPO(Chief People Officer:最高人事責任者)、エイミー・モッシャー氏は述べる。「上司は、あらゆる課題に対して矢面に立つ、組織にとって重要な防波堤だ」(モッシャー氏)

組織の透明性を高める

 組織の透明性が欠如していると、従業員の不安が増し、燃え尽き症候群を助長する。心理学者で、コンサルティング会社Fractional InsightsのCEOを務めるショナ・ウォーターズ氏は「意思決定とその影響について透明性を確保している組織では、従業員が不安を感じる可能性が低くなる。曖昧さは恐怖を生む一方、透明性は安心感をもたらす」と述べる。重要な意思決定が従業員に共有されることで、混乱を緩和できる。

業務量を適正化する

 業務量が過剰だったり不明確だったりすると、従業員が不必要なストレスを抱え、燃え尽き症候群に陥る。企業が従業員への配慮を示す効果的な方法は、ワークライフバランスの改善に取り組むことだ。従業員に期待することや役割を明確に伝え、達成可能な期限を設定し、必要に応じてスタッフを増員することが有効だ。

従業員のスキルアップを促す

 TalentLMSの報告によると、研修を受けていない従業員は、研修を受けた従業員と比べると不安を感じる傾向がある。研修を受けることで、従業員のスキルが高まり、安心感を得ることができ、静かな崩壊を防ぐ効果が期待できる。

従業員を公の場で表彰する

 「従業員の表彰は、静かな崩壊を防ぐ効果のある方法の一つだ。特に従業員が公の場で褒められると、周囲の人間にも好影響が広がる」。従業員のエンゲージメントを高めるツールを提供するRewardianのゼネラルマネジャーを務めるルーク・クライター氏はこのように述べる。ただし「表彰の対象は、組織の価値観と一致していて一貫性がなければならない。そうでないと、パフォーマンス目的の単なるポーズに見えてしまう」という。

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