「AIエージェント」プロジェクトの8割が失敗 成功を左右する“あの要素”:2026年、IT部門が押さえるべき4つのポイント
AIエージェントの活用が広がる一方、ある調査によると、関連プロジェクトの80%が本番環境に到達していないことが明らかになった。失敗の背景にある障壁と、IT部門が押さえるべき4つの要素を整理する。
自律的に思考しタスクを実行する「AIエージェント」(AI:人工知能)の開発や運用がさまざまな分野で拡大しつつある。しかし、その導入は決して平たんな道のりではないという調査結果がある。米国の非営利シンクタンクRAND(ランド)研究所が2024年8月に公開した調査結果によると、AIエージェントを使ったプロジェクトの80%は本番環境に到達しないという。なぜ、プロジェクトは失敗してしまうのか。人材不足やコストもさることながら、技術的な障壁がある。では、AIエージェントを成功させるために、IT部門が押さえておくべき技術要素とは何か。
AIエージェントを使ったプロジェクト、成功させるには
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要素1.MCP
AIエージェントや他のAIアプリケーションを内部の独自データソースや外部ソース(LLMなど)に安全に接続できるかどうかも重要な課題だ。
独自データを外部ソースと組み合わせる場合、環境間でのデータ移動時にデータがリークする危険がある。複雑で時間のかかる作業でもあるため、AIエージェントごとにデータを組み合わせるのは非現実的だ。この解決策として登場したのが、MCP(Model Context Protocol)のような標準プロトコルだ。
ISG Software Researchのデビッド・メニンガー氏(エグゼクティブディレクター)はMCPを「かつてのODBC(Open Database Connectivity)のような存在だ」と指摘する。ODBCはデータベース接続のための標準となったように、MCPはAI時代のデータ接続の必須要件となりつつある。「MCPをサポートしないデータ管理ベンダーは、競争から脱落するだろう」と警告する声もある。
では、AIエージェントを成功させるために、MCP以外に押さえておくべき技術要素とは何か。
要素2.セマンティックモデル
AIエージェントにおけるもう一つの障壁が「データ品質」だ。データの品質の低さや不整合がAIエージェントの開発を妨げ、出力の正確性や信頼性を損なう恐れがある。これを防ぐために注目されているのが「セマンティックモデル」だ。
これはデータの「意味」を定義する辞書のようなもので、AIエージェントがデータを正しく解釈するために不可欠となる。Snowflakeは2025年9月、セマンティックモデルを標準化するためのコンソーシアム「Open Semantic Interchange」(OSI)を設立し、複数の企業とともに同分野の標準化を進めている。
要素3.PostgreSQL
技術選定において、もう一つの潮流が「PostgreSQL」への回帰だ。DatabricksやSnowflakeといった主要ベンダーが、相次いでPostgreSQL関連技術を持つ企業を買収している。
AIアプリ開発において、なぜMySQLや商用DBではなくPostgreSQLが選ばれるのか。その理由は、「拡張性」と「マルチモーダル対応力」にある。
開発者向けQ&Aサイト「Stack Overflow」の年次開発者調査「2024 Stack Overflow Developer Survey」によると、PostgreSQLは開発者に人気のデータベース第1位だった。
AIエージェントは、構造化データ(売上数値など)だけでなく、非構造化データ(テキスト、ログ、画像ベクトルなど)を同時に扱う必要がある。PostgreSQLは、従来のリレーショナルデータ処理に優れていることに加え、地理情報関連の拡張機能(PostGIS)を持つ。データ記述言語「JSON」形式に対応しており、意味の類似度で関連データを発見する「ベクトル検索」との親和性が高い傾向にある。
専用のベクトルデータベースを別途導入することなく、既存のSQLスキルセットでRAG(検索拡張生成)やエージェントの長期記憶を実装できる点は、運用負荷を下げたいIT部門にとってメリットとなる。
Redpanda DataのCTO、タイラー・アキダウ氏は、「SQLエンジンを一から構築するのは悪夢だ」と語る。この考えの通り、DatabricksやSnowflakeはPostgreSQL関連企業を買収している。その理由は、堅牢(けんろう)な基盤を「時間を金で買って」手に入れるためだという。これにより、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールとAIエージェントのデータ基盤を、PostgreSQLという共通言語の上で統合できると期待されている。
要素4.ベンダーの動向
各分野で最適なツールを組み合わせる「ベストオブブリード」がよしとされた時代もある。しかし、AI開発コストの増大に伴い、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft、DatabricksやSnowflakeといった企業による、企業の買収は加速しつつある。
IT部門が製品やサービスの導入や決裁時に警戒すべきは、導入しようとしているツールを提供する企業が「買収される側」になるリスクだ。買収後、開発ロードマップが大幅に変更される、親会社のプラットフォーム専用機能になる、ライセンス料が高額になるといったリスクが想定される。
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