「大手の看板」に騙されるな 1300社が明かすSIer選定の“致命的な落とし穴”:シェア首位でも満足度が低い「真の理由」
ノークリサーチは2025年7〜8月、年商500億円未満の中堅・中小企業1300社を対象に販社/SIerのシェアと評価を調査した。DX時代のパートナー選定には新たな視点が必要であることが明らかになった。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が中堅・中小市場(SMB)にまで押し寄せる中、企業のITインフラを支えるベンダー(販社)やシステムインテグレーター(SIer)の役割はかつてないほど重要になっている。しかし、膨大な選択肢の中から自社にとって最適なパートナーを見極めるのは容易ではない。
ノークリサーチが2025年7月〜8月に実施した調査によると、単なる導入社数のシェアと、ユーザー企業が抱く「信頼(満足度や成功体験)」の間には、無視できない乖離(かいり)が存在することが明らかになった。本稿は、調査結果を基に販社やSierの動向や自社に合ったパートナー選定のコツを整理する。ノークリサーチの調査は、年商500億円未満の中堅・中小企業1300社を対象に実施したものだ。「2025年版 中堅・中小市場における販社/SIerのシェアとユーザ評価レポート」にまとめられている。
シェアと信頼は必ずしも一致しない
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ノークリサーチの調査は、販社やSier計88社を列挙して、SMBが主要なIT商材やソリューションの委託先や購入先としている企業を集計、分析したものだ。
SMBにおける「プライム社数シェア」(SMB各社にとって最も主要な委託先や購入先)のシェアを見ると、いずれの年商規模でもノークリサーチが「独立系」と見なす企業の割合が30〜40%を占めていることが分かる。
特に、年商規模が大きくなるにつれて独立系の比率は高まり、年商50億円以上500億円未満の中堅企業層では48.8%と、ほぼ半数に達する。一方、小規模企業層(年商5億円未満)では「その他」の比率が32.5%と高く、特定のプライム販社を持たない、あるいは「地場のSIer」に依存している実態が浮かび上がる。
しかし、シェアが高いことが必ずしも「全ての面で信頼されている」ことを意味するわけではない。ノークリサーチは、シェア(認知や導入実積)とは別に、以下の2つの指標を算出している。
- 成功体験スコア
- IT商材の導入を通じて、売上増加や生産性向上などの具体的な成果がどの程度得られたかを数値化したもの。
- 評価スコア
- 「業務を理解した提案」などのプラス評価から、「単なる御用聞き」といったマイナス評価を差し引いた、ユーザーの満足度を示すもの。
これらのスコアを分析すると、シェア首位を独走する大塚商会でさえ、全ての項目で全体平均を上回っているわけではなく、得意や不得意が明確に分かれていることが判明した。
独立系SIerの二大巨頭、その現在地は
卸売業(n=92)や小売業(n=62)といった業種において、大塚商会はシェア首位を堅持している。同社の成功体験スコアを全体平均と比較すると、特定のカテゴリに偏ることなく安定した実積を示している。
しかし、詳細な評価スコアに目を向けると、プラス評価とマイナス評価の差分において、全体平均を下回る項目も存在する。これは、同社が抱える顧客基盤が極めて広大であるため、提供されるサービスの標準化が進んでいる一方で、より深い個別要件への対応や、特定の先進的な技術活用(人工知能<AI>など)において、ユーザー側の期待とのギャップが生じやすいことを示唆している。
「最も主要な委託先/購入先を通じて得られた成功体験スコア」「プラス評価とマイナス評価の差分スコア」(出典:2025年版中堅・中小市場における販社/SIerのシェアとユーザ評価レポート、ノークリサーチ)
独立系の第2位に位置するオービックは、卸売業や小売業で大塚商会を追随している。同社は特に、基幹系システムを中心とした一気通貫の支援に定評がある。特筆すべきは、年商規模が大きくなる中堅企業層において、独立系SIerの存在感がメーカー系を凌駕(りょうが)している点である。これは、製品の縛りがない「独立系」ならではの柔軟な提案が、複雑な業務プロセスを持つ中堅企業から評価されているためといえる。
メーカー系、キャリア系は?
メーカー系の代表格である富士通Japanは、評価スコアにおいて「自社製の製品/サービスを生かした個別要件への対応力」で極めて高い評価を得ている。SIerが汎用(はんよう)製品のパッケージ販売に注力する一方、同社は自社開発のソフトウェアやハードウェアの特性を熟知し、ユーザー企業の細かな業務要件に合わせた調整(フィッティング)を得意としている。これは、「標準機能だけでは業務が回らない」と悩む中堅企業の情シス部長にとって、強力な信頼の根拠となっている。
キャリア系の中で注目すべきはNTTドコモビジネス(NTTコミュニケーションズ)だ。同社の成功体験スコアは、特に「従業員や職場に関わる項目」において全体平均を大きく上回っている。
具体的には、業務システムをSaaS化することで自宅での勤務を可能にするといった「場所に依存しない働き方」や、営業社員が外出先からも見積書を発行できるようにするといった「従業員の生産性向上」の項目で、全体平均を上回る成果を上げている。
業種や地域で変わる「信頼のあり方」
業種別に見ると、卸売業では「独立系」の上位5社に富士ソフトやTKC、ラディックス(RADIX)がランクインしており、混戦状態にある。
小売業では、ミロク情報サービス(MJS)や日本デジタル研究所(JDL)、両備システムズなどが上位に食い込んでいる。これらのSIerは、財務会計や特定の業務プロセスなど特定の領域に特化した強みを持っている。
地理的な要因も、SMBのパートナー選びには欠かせない。調査結果によれば、北海道地方では「NEC系」の比率が高く、北陸地方では「電力会社系」の値が相対的に高い。この傾向についてノークリサーチは、オンサイト(現場)での支援」を理由に挙げる。
サービス提供側の意識の変化
ユーザー側の評価だけでなく、サービスを提供する側の意識も変化している。ノークリサーチは、「IT関連サービス業」と回答した企業152社を対象に「今後求められると考えるIT企業の役割や取り組み」について尋ねた。その結果、「納期や期限で区切らずに中長期的に支援を提供する『伴走型SI』」や、ユーザ企業と協議した共通目標の達成を目指す「共創型SI」が求められると回答する割合は高い傾向にあった。特に、ユーザー企業とともに利益や成果を分かち合う「共創型SI」への意欲は、年商規模の大きなIT企業ほど強く、従来の「請け負って終わり」のビジネスモデルが限界に達していることを示唆している。
まとめ
本調査から導き出される「信頼できるSIer」の選び方は、以下の3点に集約される。
- シェアの数字に惑わされない
- 大手だからといって、自社が求める特定の成果を獲得できるは限らない。
- 個別要件への「対応力の源泉」を問う
- 自社独自の業務プロセスを維持したい場合は、「自社製品を熟知し、カスタマイズに前向きな」パートナーが適している。
- 「伴走」の質を確認する
- IT企業自身が「共創」や「伴走」を掲げているか。人月計算の費用見積もりではなく、成果物やサービス内容に応じた課金体系を持っているかは、パートナーの本気度を測る試金石となる。
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