「コードの50%をAIが生成」しているGoogle “増員ゼロ”開発体制の背景:なぜエンジニアを増やさないのか
AlphabetのCFOが、同社のソースコードの約50%はAIエージェントが生成しているという“衝撃の事実”を明かした。なぜ自動化の推進を急ぐのか。巨額のインフラ投資を支えるために、開発現場で何が起きているのか。
Googleの親会社であるAlphabetは、AI(人工知能)インフラへの巨額投資に必要な予算を捻出するため、AI技術を活用した業務効率化を徹底している。その一環として、AlphabetとGoogleでシニアバイスプレジデント兼CFO(最高財務責任者)を務めるアナット・アシュケナージ氏は、同社の全ソースコードの50%近くを「AIコーディングエージェント」が生成していることを明かした。
このニュースの真の衝撃は「AIエージェントがGoogleのような大手ベンダーの製品のソースコードを記述している」という技術論ではない。「Googleでさえ増員なしで回しているのに、なぜわが社はエンジニアを増やさないと開発できないのか」と経営層から詰められたとき、反論するための材料が問われているのだ。
この数字をうのみにして「AIツールがあれば人は要らない」と判断するのは危険だ。アシュケナージ氏の発言を読み解くと、Googleがこの体制を維持するために払っている「隠れた代償」と「人間が担うべき新たな責任」が見えてくる。
GoogleがAIコーディングをフル活用する本当の理由
アシュケナージ氏は、2025年第4四半期(10月〜12月)の決算説明会でこの事実に言及した。同氏はAI技術を活用した業務効率化、AI能力増強に向けた投資資金を確保する方針を示した。
2025年第4四半期におけるAlphabetの売上高は、2024年第4四半期(10〜12月)比で18%増の1140億ドルだった。通期の売上高は2024年比15%増の4030億ドルとなった。
クラウドサービス群「Google Cloud」やAIサービスの需要が増している中、アシュケナージ氏は決算説明会で、ソフトウェア開発者の増員は不要であることを示唆した。「現在、ソースコードの約50%はコーディングエージェントが記述しており、それを当社のエンジニアがレビューしている。これによって、エンジニアを増やすことなく、現状の体制のままでより多くの業務を迅速に遂行できている」
アシュケナージ氏によると、Alphabetは2025年の設備投資(CAPEX)の60%をサーバに、残りの40%はデータセンターとネットワーク機器に割り当てた。2026年も同程度の支出が見込まれており、同社はサーバ、データセンター、ネットワーク機器に1750億〜1850億ドルを投じる計画だ。これは、同社が高まる需要に応えるための技術革新とAIインフラ整備に注力していることを示唆している。
株式市場では、AIインフラへの巨額投資が投資対効果(ROI)に見合わないのではないかという懸念が広がっている。これに対してAlphabetとGoogleのCEOを務めるスンダー・ピチャイ氏は、供給制約と計算需要の課題について次のように説明した。「供給制約に直面しているが、2026年の設備投資は将来を見据えたものだ。調達期間の長期化も考慮し、長期視点で計画している。需要と供給のギャップ解消には、過去の取り組みからの時間差がある点をご理解いただきたい」
AIインフラへの投資は、Google CloudやAIサービスの需要を支えるために不可欠だ。決算報告書によると、Google Cloudの年間ランレート(直近の売上高を年換算した数値)は700億ドルを超えている。
ピチャイ氏は、企業向けAIサービス「Gemini Enterprise」の有料ライセンス数が800万を超え、導入企業数は2800社以上に達したことを明らかにした。航空機メーカーAirbus、電子制御機器メーカーHoneywell、CRM(顧客関係管理)ツールベンダーSalesforce、Eコマース(EC)事業者Shopifyなどの大手企業を含め、12万社以上の企業がGoogleのAIモデル「Gemini」を使用している。Geminiを導入している企業の支出額は、当初の契約を30%以上上回るペースで増加しているという。
ピチャイ氏によると、Google Cloudの顧客企業の75%近くが、チップからAIモデル、AIエージェントまで、当社が一元的に最適化したAI製品を利用している。「これらのAI製品を利用している顧客は、そうではない層に比べて1.8倍の製品を使用しており、当社の収益成長を加速させている」と同氏は補足する。
調査会社Forrester Researchのプリンシパルアナリストであるリー・サスター氏は、Google Cloudの2025年第4四半期の売上高が、2024年第4四半期比48%増になったことは、Google Cloudが「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」に対する本格的な対抗馬になった証拠だと考える。「GoogleはAIネイティブなクラウドサービスを提供することで、顧客獲得に向けた取り組みを加速させている。ただし、その代償として親会社であるAlphabetは、巨額の設備投資を余儀なくされている」というのがサスター氏の見解だ。
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