「出社したくない」従業員を納得させるハイブリッドワークの条件:従業員と会社の間に温度差
従業員が働き方の柔軟性を重視しているにもかかわらず、企業は「オフィス回帰」への期待を高めている。調査会社Clickchartの調査で、両者の温度差が浮き彫りになった。出社に疑問を抱く従業員を納得させる方法はあるのか。
職場におけるテクノロジーの活用は新たな段階を迎えている。調査会社Clickchart(CCS Insightの名称で事業展開)の調査「Survey: Employee Workplace Technology, 2025」は、既存の働き方がさまざまな方向に変化していく一方、依然として根強く残っている企業の現状を明らかにした。従業員が働き方の柔軟性を重視しているにもかかわらず、企業は「オフィス回帰」への期待を高めている。
「出社したくない」従業員を納得させるには?
ハイブリッドワークは目新しいものから当たり前のものへと変化したが、雇用主と従業員の間で、その在り方について意見が一致していない。従業員の半数以上(56%)が現在、フルタイムでオフィス勤務をしている。しかしこの形態を望んでいるのはわずか15%で、75%はよりバランスの取れた働き方を希望している。
このギャップの拡大は、組織が選択を迫られていることを示している。プレゼンス重視のアプローチを続けるか、目的重視のアプローチに切り替えるかだ。プレゼンス重視のアプローチは、従業員の出勤状況と生産性を関連付ける見方だ。
しかし多くの従業員は、オフィス以外の場所でも効率的に仕事ができる場合、出勤することの価値に疑問を抱いている。回答者の80%以上が「雇用主は既にハイブリッドワークへの対応体制が整っている」と回答していること、「オフィス勤務の主なメリットが業務ではなく人間関係に起因している」という事実からも、この傾向は裏付けられる。
目的主導型の組織は、異なるアプローチを採用している。テレワークでは得られない何かをオフィスで提供できるよう努めているというものだ。同僚とコミュニケーションを取り、学びを得たり、チームへの帰属意識を得たりすることは、依然としてオフィスワークのメリットだ。これらは画面越しでは実現するのが難しい。
だからこそ、ワークプレイスのデザインが重要になる。従業員が快適に過ごすことができ、チームとのつながりを感じられることを優先的に考えた「データ駆動型のオフィス」が一例だ。収集したデータに基づき、個人作業やチームセッションなどスペースの用途を変えたり、空調や照明を自動化したりする。こうしたオフィスでは、テレワークでは実現が難しい、従業員の集中力や協調性の向上につながる。
業務用デバイスの使い分けが加速
業務用デバイスにも変化が生じている。ノートPCは依然として業務に不可欠だが、それだけが業務用デバイスではない。家庭環境での業務用デバイスとして、従業員の76%がスマートフォンを使用しており、デスクトップPCを上回っている。タブレット端末もオフィスと家庭の両方で普及が進み、利用率は前年比2倍以上に増加した。
従業員は、個人所有のデバイスと会社支給のデバイスを併用し、さまざまな状況でタスクを管理している。生産性を維持するために、一部の従業員は自身のスマートフォンやタブレット端末も購入している。このことは、責任とコストが組織から従業員に移行していることを示しており、組織はこの傾向が長期化しないように注意する必要がある。
このような複数のデバイスを使い分ける流動的な働き方は、従来のデバイス調達の方法には反映されていない場合もある。ユーザー企業は、デバイスありきではなくエンドユーザーの利便性を重視する必要がある。シームレスかつ安全なID管理、一貫したワークフローなどがデバイスそのものよりも重要視される。
テクノロジーの導入が進むと、従業員の期待も変化する。従業員の83%が「デバイスは業務に十分対応できる」と回答しており、ソフトウェアとITインフラも高い評価を得ている。パスワードの煩雑さやシステムの信頼性の低さなど、かつては問題となっていた不満も軽減されている。
基本的な仕組みが整うと、従業員は仕事のやりがいにますます重点を置くようになる。ワークライフバランスは今やポジティブな体験を生み出す要因の一つだ。同僚との人間関係、「評価されている」という実感、そして支援してくれる上司の存在がそれらに続く。ツールへのアクセスだけでなく、チームの心理的安全性、同僚とのつながり、明確なビジョンによってモチベーションが上がる従業員の姿が見て取れる。
一部の従業員はハイブリッドな働き方に十分適応できていると感じているが、依然としてハイブリッドワーク環境に慣れなかったり、仕事とプライベートの線引きがあいまいになったりする従業員もいる。こうした心理的影響は、より顕著になるだろう。
これらの変化は、職場環境がこれまで以上に流動的で複雑になり、思慮深い設計が必要になることを示唆している。ハイブリッドワークにはより明確な目的が求められ、業務用デバイスには柔軟な働き方に合うものが求められる。
成功する企業は、デバイスそのものだけでなく、それらが実現するエンドユーザーの体験にも焦点を当てる企業だ。テクノロジーは依然として不可欠だが、その価値は、より健康的で持続可能な働き方を実現することにある。
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